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KubeCon + CloudNativeCon Japan 2025 に参加しました!

はじめまして、24卒として新卒で入社したSREのponです。 今回freeeのSREから7名が、2025年6月16日・17日に開催されたKubeCon + CloudNativeCon Japan 2025に参加しました。

KubeConに参加したFreeersが、エントランスのパネル前で記念撮影をしている
参加記念写真

これから4日間にかけて、KubeConに参加したメンバーによる参加レポートを連載していきます。(おかわりもあるかも?) 様々なバックグラウンドを持つメンバーによる記事をぜひ楽しんでください!

日付 メンバー タイトル
7/15 sho What's New in Open Source Kubernetes?/Access AI Models Anywhere: Scaling AI Traffic With Envoy AI Gateway
7/16 nakagawa From ECS To Kubernetes (and Sometimes Back Again): A Pragmatist's Guide To Migration
7/17 kamimuu Never Underestimate Memory Architecture/No More Disruption: PlayStation Network’s Approaches To Avoid Outages on Kubernetes Platform
7/18 yama Your SBOM Is Lying To You – Let’s Make It Honest

はじめに

1日目はponが担当します! この記事では以下2つのセッションについてお話ししていきたいと思います。

Choose Your Own Adventure: The Dignified Pursuit of a Developer Platform

概要

この公演は技術選定を体験する視聴者参加型の講演でした。

現在CNCFプロジェクトは20以上存在し、開発者がこれらのツールを全て理解し扱うのは現実的ではありません。そこで、開発者の負担を軽くするため、以下の3つのロールを提案しました。

  1. エキスパート (Kubernetesの専門家)
  2. 開発者 (ユーザー)
  3. プラットフォームエンジニア

プラットフォームエンジニアは、エキスパートの専門知識と企業要件を組み込んだ形で、開発者向けのセルフサービス環境を提供します。本講演では、聴講者がプラットフォームエンジニアとなって、その技術選定プロセスを体験しました。

技術選定プロセス

この公演ではプラットフォーム構築における4つの重要な技術選定を体験しました。

目標は「開発者のラップトップ上のアプリケーションコード("Hero")を、本番環境で動作するアプリケーションにする」というもので、与えられた二択の選択肢から投票で技術選定を行なっていきます。以下に簡潔に会場の選択を紹介します。

1) APIマネジメント

Crossplane vs Kubevela

  • Crossplane
    • 外部リソースをKubernetes API化、強力だが複雑
  • Kubevela
    • シンプルな抽象化を提供

会場は柔軟な外部リソース管理が可能なCrossplaneを選択しました。

2) ポリシー管理

Kyverno vs Validating Admission Policy

  • Kyverno
    • 豊富な機能、YAMLライクな文法
  • Validating Admission Policy
    • Kubernetes標準の検証機能

会場はより包括的なポリシー管理が可能であるKyvernoを選択しました。

3) ワークフローの実行

Argo Workflows vs Tekton

  • Argo Workflows
    • Kubernetes nativeなワークフロー、UIが充実
  • Tekton
    • CIパイプライン特化、再利用可能なコンポーネント

ここは時間を巻くため選ぶ工程が飛ばされましたが、Argo Workflowsにて実装デモが進みました。

4) UI

Backstage vs Port

  • Backstage
    • 最も活発なCNCFプロジェクトの1つ、豊富なプラグインが魅力
  • Port
    • ローコードアプローチ

会場ではコミュニティの活発さと拡張性からBackstageが選ばれました。

ゲーム感覚でプラットフォーム設計の考えるポイントを学べる楽しいセッションでした。各ツールの選択は、コミュニティ投票とライブデモを通じて行われ、実践的な理解を深めることができました。

Scaling AI Responsibly: Building Ethical, Sustainable, and Cloud Native AI Systems

昨今話題のAIに関する講演です。AIの急速な発展により、多くの企業がAIを活用した開発を進めています。弊社もそのうちの一つです。 AIは確かに便利で簡単に開発に取り入れることができますが、その使用には大きな責任が伴います。このセッションでは、責任あるAI開発の実現に向けて、第一線で活躍する専門家たちが対談形式で知見を共有しました。 以下は大まかなトピックごとのまとめになります。

オープンソースの重要性

AIの開発において、オープンソースの役割は極めて重要です。特に、モデルの透明性確保やトレーサビリティの実現には、オープンソースコミュニティの貢献が不可欠です。特定の企業や組織に依存せず、より安全で信頼性の高いAIシステムの構築が可能になります。

開発者体験の重要性

AIの開発者体験(DX)を向上させることは、安全で効率的なAI開発の鍵となります。 セキュリティと信頼性の確保とデータの保護と適切な取り扱い等を整備し担保することにより、開発者は本質的な開発作業に集中できるようになります。

AIモデルの効率的な運用

AIモデルの運用には莫大なコストがかかります。コストの話は企業へのAI導入において大きなボトルネックになりうるでしょう。

AIのモデルには大きく二つのコストがかかる部分があります。

  1. モデルの学習
  2. モデルの推論

講演者はすべての企業が学習から取り組む必要はないと話していました。モデルの学習はAIの専門企業に任せ、推論部分の最適化に注力するのが現実的です。これにより多くの企業は現実的なコストでAIを活用できるようになります。

まとめ

AIの発展は目覚ましく、今後も新しい課題や可能性が生まれ続けるでしょう。私たち開発者は、これらの課題に向き合い、責任を持ってAIを活用していく必要があります。

この講演のメインではないのですが、講演者の最後の言葉がとても印象に残っています。

「私にとって責任あるAIとは、娘がChatGPTで宇宙飛行士や医師について検索した際に、すべてのジェンダーの情報が公平に表示されるようなAIです。このような偏りのない、透明で信頼できるAIの未来は実現できるでしょうか?」

上記があるべき姿かの話は深い議論が必要だと思うのでここで言及は避けますが、AIが生活の一部になりつつある今、AIはどうあるべきかという問いに関しての答えを自分も持っておくべきだなと思いました。

おわりに

振り返って思うと、インフラ未経験からSREとして1年が経過した今、KubeConへの参加は良いタイミングでした。現在の社内インフラ環境への理解を軸として、より広い技術の世界を知ることができたからです。 1年前までKubernetesの単語すら知らなかった自分は、これまで社内の技術スタックをベースに枝葉を伸ばして学んでいました。KubeConでは社外の新たな技術に触れることで「なぜこの技術を選択したのか」という根本的な問いに立ち返るきっかけを得ることができました。様々な選択肢や可能性に触れることで、視野を広げることができたと感じています。

また、英語への不安を感じる方も多いかと思いますが、最新の文字起こしツールと自動翻訳を組み合わせることで、セッションの内容をある程度は理解することができます。かつて私が大学院生だった頃学会発表でも切望していた技術が、今では気軽に使える時代になっています。 英語のセッションによる敷居の高さを感じて参加を迷われている方へ、ぜひ一度PCを持って参加されることをお勧めします。新しい発見と学びの機会として、価値のある経験になるはずです!

おまけ

7/16にfreeeではKubeConの感想を肴に語らう会というイベントを開催予定です。 イベント後半では懇親会も予定しておりますので、記事にて興味を持ってくれた方・KubeConについて語りたい方・登壇したい方は奮ってご参加ください!