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新卒QAエンジニアの育成を振り返って

こんにちは。人事労務でQAエンジニアをしているsaeです。

freee QA Advent Calendar2025 の12日目を担当します。

この記事では、自身が携わった新卒育成(QA)についてこの一年で考えてきたことをお届けします。

この記事をおすすめしたい人

  • QAエンジニアの育成に悩んでいるマネージャー・リーダーの方
  • QAエンジニアのスキル獲得に悩んでいる/迷っているJr.QAの方
  • 成長環境を求めてQAエンジニアを目指している学生の方

1. 私の新卒育成の考え方

肩肘張らずに成果を出せる状態を目指し、大前提としてチーム"一丸"で働ける状態を目指しました。 まずは一緒に働く人を知り、仲良くなることが最優先。その先に、頼ったり頼られたりするいい関係が構築されていくと思っているからです。

その上で最初の半年の準備期間では、以下の3つのポイントを重視して育成計画を設計しました。

ポイント1:ゴールから逆算した具体的な到達目標設計

以下の状態を目指し、「誰が見ても判断できる具体的な到達点」で、四半期ごとに育成重点ポイントと到達目標を明確に設定するように努めました。

  • 育成される側が「何ができればいいのか」を明確に理解できる
  • 育成する側が「どこまでできているか」を客観的に判断できる
  • 進捗を可視化でき、適切なタイミングで次のステップに進める

【例】 「テスト実行ができる」は、以下のように新卒が目指すべき具体的なスキルレベルに変換していきます:

  • 「テスト実行した結果をエビデンスとして残す(他の人がテスト結果を確認できる状態で)」
  • 「成果物管理ツールの操作やリリースまでに必要な段取り、リリース後の監視までの一連の流れを理解している」
ポイント2:「わからない」を溜め込まない仕組み作り

今回の育成では、新卒本人の希望を踏まえて毎日の1on1を実施することとしました。

4〜5月:

  • 主目的: 社会人に慣れるまでのオンボーディング
  • QA関連の知識は、基礎知識のinputメイン(たまに実行お手伝い程度)
  • 「何がわからないかがわからない」状態という前提で日々のお困りごとの言語化をサポート

6月以降:

  • 主目的: 主目的: 必要な武器はしっかり授ける(Jr.QAとしての成長を加速)
  • この時期から、メンターから基礎知識をしっかりインプットし、積極的に実践の場を与えることを重視
  • 雑談メイン+お困りごとがあれば相談の場として利用
  • 議題がなければskipしてOK

1on1での工夫:

  • 具体的なイメージがわかない場合は指導担当者がケースを用意する
  • 午前中に1on1を実施し、前日の疑問解消+今日の作業計画を立てる習慣を身につけさせる
  • 「困ったことない?」だけでなく、「この作業の目的って何だと思う?」と理解度を確認する質問をして、都度自分の言葉で結論を要約できる状態を目指す
ポイント3:「全体を理解しながら仕事をする」を徹底

自分で作業優先順位を考えられる状態を目標に、「なぜこの作業をするのか」「全体の中でどういう位置づけなのか」を常に意識させることを大切にしました。

育成期間を抜けて自走するようになると、突発作業や並行する業務と向き合っていかなければいけません。その時に自分の抱えているタスクのうちどれをいつまでに実行すべきか棚卸しできるスキルを授けたいという思いから、以下の視点で全体像の理解を促す指導を意識しました。

  • 視点①:担当プロダクトのビジネスモデルを理解する

自分の仕事がユーザーやビジネスにどう貢献しているかがわかるようになると、ユーザー体験ベース/リスクベースでのテスト設計ができるようになっていきます。

  • 視点②:開発がどうやって回っているかを考える

開発の流れを理解すると、タスクの見通しを付けやすくなり、作業の優先順位もある程度明確にイメージできるようになります。すると、不確実な要素等にじっくり向き合う心の余裕が生まれます。また、見通しを立てられるようになると兼務タスクとの両立もスムーズにこなせるようになっていきます。

それでは、以上のポイントを踏まえて実際の半年間のロードマップを見ていきましょう。

2. 半年間の全体像と具体的な育成メニュー

開発の流れを理解するための全体研修※を受講の上、入社から半年間を以下のステップに分類し、育成を進めました。

※全体研修ではソフトウェアエンジニアリング入門というテーマを深める座学を行います。(詳細は以下リンクをご参照ください)

ソフトウェアエンジニアリング入門 - Speaker Deck

時期 目標 状態
4~5月 社会人としての土台づくり ・まずは関係者各位としっかり仲良くなる
・組織・業務を理解し、質問できる
6月 QAテスト担当者をやってみる ・howを覚える+交友関係増やしていく
・サポートありきで業務遂行できる
7月 QAテスト担当者として自走を目指す ・簡易案件を一人で完遂できる
・howの背景に思いをはせる
・知識不足の補填は継続
8~9月 Jr.QAとして一人前に ・規模の大きいPJにも対応できる
・全体を俯瞰する
・知識不足の補填は継続
10月 育成完了 ・Jr.QAとして不足ない状態
・知識不足の補填は継続

freeeでは、QAテスト担当者やJr.QA等に分類して詳細なスキルラダーを設定しています。

新卒の育成ではこの内容を新卒向けに咀嚼して目標に組み込んでいく形を採用しました。

【4〜5月】Step1:社会人としての土台づくり

実践内容の要点/具体例

①人間関係の構築

  • welcomeランチ(QA全員+スクラムチーム)
  • メンター主導での雑談/イベント巻き込み
  • チームビルディングイベント参加促進

②組織理解(input重視)

  • 全社定例mtgやスクラムイベントの説明
  • 組織・役割・意思決定プロセスの理解
  • 担当ドメインの操作説明
  • freeeにおけるQA業務の説明

③雑事でつまづかないための指導(input+実践)

  • 勤怠登録/月締め、工数登録、経費申請の早期習得/徹底

④テストエンジニアの一歩(input重視)

  • JSTQB Foundation Level (FL)取得に向けた学習とQAオンボーディング受講
  • 毎日の1on1で不明点解決
  • 指定された取引の操作/再現
  • 小規模タスクでのテスト設計/実行

この時期のポイント

  • リラックスして働ける状態を最優先し人間関係構築に最注力
  • 今後の育成ロードマップを事前に共有し、新卒社員の性格を加味して育成の方針やスタンスをすり合わせておく
  • 育成メニューは、社会人の基礎形成に重点を置く
【6月】Step2:QAテスト担当者をやってみる

前月までの育成メニューを経てどう成長した?

  • メンターの力なしで交友関係を拡大できる状態に到達
  • 今後の育成方針についてメンターとメンティー双方での合意形成完了

実践内容の要点/具体例

※QAテスト担当者として新卒で目指すスキルは以下のように定義しました。

なお、6月は、テスト実行に必要なツール類の使い方、ドメインの操作方法をinputし、1人でテスト実行できる状態を目指しました。

観点 スコープ 具体的な到達点
手動テスト実行 ・配属されたチームでのテスト実行ができればOK
・実行以外はサポートありきでOK(理解に重点をおく)
・テスト実行した結果をエビデンスとして残す(他の人がテスト結果を確認できるレベルで)
・テストライフサイクルを理解している
テスト環境準備 手動テスト実行と同じく ・テスト実行に必要な環境準備/ログインができる
・困ったら相談する先を理解している
・権限/セキュリティ観点を理解して開発環境を使える
テストプロセス一連の作業 ・一連のテストプロセスを理解し、freeでいうところのどの作業が該当するか理解している
・バグのハンドリングがチョットわかる(サポートありきでOK)
・PJの開始~終了までQAとして更新すべき資料とその理由を自分の言葉で説明できる
・JIRAが使える
・バグ/障害が自チームのものなのか否かがなんとなくわかる
ツールを使ったテスト実行 手動テスト実行と同じく
+E2Eの使われ方がわかっている
手動テスト実行と同じく
+deploy時のE2E等状況確認を一人でも回せる
テストの作成 テストケースの書き方がわかっている 簡易案件のテストケース作成ができる

①QAテスト担当者として(input重視)

  • 手動テスト実行(証跡取得、成果物管理ツールの一連操作)
  • テスト環境準備(環境準備/ログイン、権限の理解と使い分け)
  • テストプロセス一連の作業理解
  • JIRAの使用、ハッピー※のハンドリング
  • ツールを使ったテスト実行(E2Eの使われ方理解)
  • deploy時のE2E確認の理解(メンターの補助あり)
  • 簡易案件のテストケース作成(メンターの補助あり)

freeeではバグをハッピーと呼んでいます

この時期のポイント

  • 「できる範囲を少しずつ広げていく」時期
  • サポートありきで良いので、実際に手を動かすことを重視
  • 毎日の1on1で不明点を解消し、「わからない」を溜め込まない
【7月】Step3:QAテスト担当者としての自走を目指す

前月までの育成メニューを経てどう成長した?

  • QAテスト担当者として習得を目指すスキル全体について、積み残しがない状態に到達
  • スキル面は申し分なし。自走まではあと一歩...!

実践内容の要点/具体例

6月までに習得したスキルを使って、サポートなしで業務を遂行できる状態を目指しました。

①QAテスト担当者(output重視)

  • 新規参画した中途社員への定例業務/ドメイン指導(メンターの補助あり)
  • ドメイン勉強会の共同開催(メンターの補助あり)

②Jr.QAのスキル習得(input+実践重視)

  • テスト環境トラブル時の調査・依頼先判断
  • エンジニアと協力した必要観点の洗い出し
  • ハッピー分析の基本作業(重篤度※別の傾向・原因分類)

freeeではリスクを重篤度という概念で定義しています

この時期のポイント

  • 「教えられる側から教える側へ」の転換期
  • 自分が理解しているだけでなく「人に説明できる」レベルの到達を目指す
【8〜9月】Step4:Jr.QAとして一人前に

前月までの育成メニューを経てどう成長した?

  • QAテスト担当者として:卒業要件獲得(自走OK)
  • Jr.QAとして:テスト分析に苦戦するも、その他のスキルは順調に獲得/定着

実践内容の要点/具体例

これまでの学習の集大成として、Jr.QAとして必要なスキルを全て習得します。

※Jr.QAとして新卒で目指すスキルは以下のように定義しました。

観点 スコープ 具体の到達点
テスト環境準備 実行結果をengに正しく共有できる テスト環境が動作しないときに現象を調査し、誰に対応を依頼すれば良いか判断、依頼できる
テストプロセス一連の作業 小規模のテストプロセスを一人で回せる状態 原文のまま
ツールを使ったテスト実行 画面周りの操作に関じないテスト実行ができる API関連のテスト実行ができる
自動テストの作成 E2Eチョットわかる状態になる 既存のE2Eの修正~mergeまでの一連の基本動作ができる
テストの作成 他者を巻き込んだテスト設計/実行ができる ・engと必要観点の洗い出しができる
・規模の大きいテスト設計に挑戦している
品質改善 バグ分析の基本作業(重篤度別の傾向や原因分類)ができる 原文のまま

①Jr.QAとして(input多め+実践あり)

  • テスト環境のセキュリティ観点含めた適切な取り扱い
  • 小規模テストプロセスの単独遂行
  • 画面以外のテスト実行(API/アクセシビリティ/モバイル)の完全習得
  • 既存E2Eの修正〜mergeまでの一連操作
  • 他者を巻き込んだテスト設計/実行
  • 規模の大きいPJへのアジャイルQAとしての参画
  • テスト分析〜設計までの一連プロセス遂行
  • ハッピー分析の継続実践

②QA業務の流れでおまけ学習(ストレッチ要件)

  • OKRの理解と扱い方
  • 障害分析の理解と扱い方
  • 分析手法など新卒向けテーマの適宜オンボーディング
  • この時期のポイント:
  • 「規模の大きいプロジェクトへの挑戦」がテーマ
  • 習得したスキルを組み合わせて、より複雑なプロジェクトに取り組む
  • アジャイルQAとしての立ち回り方を実践的に学ぶ
  • テスト分析〜設計までの一連のプロセスを自分でリードできるようになる
【10月】育成完了:Jr.QAとして自走

そして10月にはJr.QAとして自走できるようになりました! 10月以降ももちろん困った時の相談に乗ることはありますが、同僚として相互に信頼し頼り合えるいい関係に変わってきたと感じています。(頼もしい〜!)

3. おわりに

この一年を通して試行錯誤してきた結果を一年の振り返りとしてまとめてみました。改善できるポイントはたくさんありますが、新卒QAが元気に頼もしく働ける状態に育ってくれたことを嬉しく思います。二年目以降もすくすく成長して欲しい〜!

明日は、グローバルQAエンジニアのJane-sanが「Lean Six Sigma in Testing a Software and Cooking a Masterpieces」について記事を書いてくれます。お楽しみに〜!

よい品質を〜