
はじめに
こんにちは。freeeでQAのマネージャをしているuemuです。これは、freee QA Advent Calendar 2025 24日目の記事になります。
💡 プロフィール
開発エンジニアを経て、1995年に外資系企業にてテストエンジニアとしてのキャリアをスタート。以来、パッケージソフト、Web、モバイル、医療系SaaSなど多岐にわたる領域でQAエンジニアとして従事。 2019年にfreeeへジョイン、現在に至る
気づけば、「QA」という仕事に携わり始めてから、およそ30年という月日が経ちました。 四半世紀を超えるその時間は、IT技術にとっても激動の歴史でした。開発手法の変化、クラウドの登場、AIの台頭……。技術の進化は、私たちQAエンジニアに求められるスキルや役割そのものを、大きく変容させてきました。
IT技術の変遷とともにQAエンジニアがいかに進化してきたかを振り返りつつ、そしてこれからどこへ向かうのかについて考えてみたいと思います。
PCからインターネットの時代へ(1995年〜1990年代後半)

当時、コンピューターは会社で利用するものでした。コンピューターを一般の人が使うきっかけになったのは、MicrosoftのWindows95がリリースしてからです。パーソナルコンピューター(PC)と言うようになったのもこの頃ですね。
おじさん世代しか知らないと思いますが、日本には元々、国民機と呼ばれたNECのPC98シリーズというパソコンがありました。一方で、海外を中心に使われていたIBM製のPC/AT互換機があり、国内には2種類のPCが存在していました。Microsoftは、NECのPC98シリーズとPC/AT互換機向けに2種類のWindowsを提供しており、アプリケーションを提供するベンダーも2種類のOSで動作するアプリケーションを開発する必要がありました。
この当時、Macもあったけど、シェアは数%ぐらいしかなく、Macが復活するのは、Appleを追放されたジョブズが復帰した1998年以降になります。
この当時は、まだインターネットの利用は限定的で、電話回線を使ってアクセスしていました。速度も遅くかなり電話代が高額になりがちでしたが、23時以降は定額になるテレホーダイサービスを利用して、インターネットにアクセスするというのが主流でした。
まだポケベルを利用する人も多くいましたが、少しずつ携帯電話が普及していった時期でした。ただ、その頃の携帯電話は、通話とメール程度の機能しかありませんでした。
ℹ️ 主な出来事
- Microsoft Windows95が発売
- 定額でダイヤルアップ接続できる「テレホーダイ」を提供開始
- Amazon.comサービス開始
- Yahoo!JAPAN設立(1996年)
- NECが、PC98-NXシリーズをリリース(1997年)
💡QAエンジニア不在
この頃、国内では、テストエンジニアやQAエンジニアという職種は、ほとんど認知されていなかったと思います。外資系企業では、明確に職務が分かれていましたが、国内では主に開発エンジニアがテストもやっていました。
大企業やメーカーには、品質保証部や品質管理部という組織(「ヒンショウ」や「ヒンカン」と呼ばれる)があり、開発エンジニアがテストした成果物を基に品質を判断していました。ヒンショウ(ヒンカン)が、リリースOKを出さないと製品やサービスがリリースできなかったこともあり、開発組織からは恐れられる存在でしたし、仲が悪い、みたいな話もよく聞きました(笑)。
インターネットが普及する前は、アプリケーションのパッケージを購入して、PCにインストールして利用することがほとんどでした。 そのため、出荷後に何か不具合が発覚すると、パッケージを回収しなければならず、多大なコストがかかることになります。テストする側としては、毎回ドキドキしたものです。 テストのやり方についても、あまり体系立ったものはなく、とにかくリリースまでにいかに多くのバグを見つけるかに注力していたと思います。
この頃のテストで一番大変だったのは、2種類のWindows環境で検証が必要だった点です。特にPC-98シリーズは、起動ドライブがAドライブであるなどアーキテクチャが全く別物だったため、海外製アプリケーションがまともに動かないこともしばしばでした。 また、当時のWindowsは20枚ものフロッピーディスクで提供されており、システムが壊れるたびに、何度もディスクを入れ替えてOSの再インストールを行ったものです。
PC-98NXのリリースが発表されて、PC98シリーズのサポートが必要なくなった瞬間、Microsoft本社が狂喜乱舞の渦に包まれたのを覚えています
インターネット創成期(1990年後半〜2000年前半)

2001年になると、ADSLが爆発的に普及し、インターネットの利用は飛躍的に伸びました。 当時、Yahoo! BBが街頭でモデムを無料配布するというユニークな施策には賛否両論ありましたが、あれが日本の一般家庭へブロードバンドを一気に普及させる「起爆剤」になったことは間違いないと思います。
iモードの登場や、J-PHONE(現ソフトバンク)による「写メール」の発明により、世界に先駆けてモバイルネットが定着。モバゲー・GREEなどのソーシャルゲームも爆発的に流行しました。
一方で、技術先行の弊害として、高額課金を生んだ「ガチャ」問題や、セキュリティ意識の低さを突いたフィッシング詐欺が横行するなど、リテラシーが追いつかないカオスな側面もありました。
ℹ️ 主な出来事
- Google設立(1998年)
- Netscape NavigatorとInternet Explorerのブラウザ戦争勃発
- AdobeのFlashが大人気
- ブロードバンドの普及
- Winny事件
- i-modeサービス開始(1999年)
- mixiを中心としたSNSやブログが人気
- 2ch開設
- モバゲーやGREEといった携帯ゲームの普及
💡QAエンジニアの胎動
当時のインターネットは「無料」が前提の世界。正直なところ、品質への意識は今ほど高くありませんでした。 とにかくリリースが最優先。「問題があればその場で直せばいい」というスタンスで、専任のテスト担当者がいないことも珍しくありませんでした。開発者や企画者が動作確認をしてそのままリリースする、いわば「走りながら直す」スタイルが主流だったように思います。
転機となったのは、インターネットが社会基盤(インフラ)としての地位を確立したことです。アクセス集中によるサービスダウンやセキュリティ事故が「社会問題」として扱われるようになり、品質に対する見方が根本から変わっていきました。
こうした変化の最中、2003年に立ち上がったのが日本最大のテストコミュニティ「JaSST」です。その数年後には、今や多くのエンジニアが取得している「JSTQB」も始まりました。 立ち上げ初期は、金融や製造業、組み込み系といった「失敗が許されない」ハイリスクな業種の方々が中心でした。そのため、膨大なテストパターンを効率化する直交表(実験計画法)やHAYST法、ペアワイズ法といった技法に注目が集まり、多くの人が「組み合わせテスト」の最適解を模索していた印象があります。
一方で、ソーシャルゲームの流行は、多くの未経験者が「デバッガー」としてこの世界に飛び込む大きな入り口となりました。現在第一線で活躍するQAエンジニアの中にも、ここからキャリアをスタートさせた人は少なくないはずです。 彼らのような未経験者が、単なるテスターから真の「QAエンジニア」へと育っていけたのは、JaSSTなどのコミュニティが「学びの場」として機能していた功績が大きいと思います。
弊社のゆもつよさんに初めて会ったのもこの頃で、20年後、まさか同じ職場で働くことになるとは、、、不思議な縁です。
ガラケー全盛(2000年〜2010年頃)

2000年代の幕開けとともに、iモードの爆発的な普及やカメラ機能の実装など、携帯電話市場は劇的な拡大期を迎えました。とりわけ各メーカーがキャリアごとに年2回(春・秋モデル)のペースで新機種を開発・投入し、百花繚乱の端末が市場を席巻する「ガラケー全盛期」が到来しました。
一方で、行き過ぎた高機能化は開発費の肥大化を招き、メーカーの収益を圧迫し始めていました。 加えて、グローバル市場での競争激化と「スマートフォン」の登場が決定打となり、競争の軸がハードウェアからソフトウェア(OS・アプリ)中心へと移り変わったことで、日本の携帯電話市場は大きな転換を迫られることになりました。
ℹ️ 当時の国内携帯電話メーカー
| メーカー | 端末型番 |
|---|---|
| NEC(日本電気) | N |
| パナソニック | P |
| シャープ | SH |
| 富士通 | F |
| 三菱電機 | D |
| ソニーエリクソン | SO |
| 東芝 | T |
| 三洋電機 | SA |
| 京セラ | K |
💡労働集約型のテスト
携帯電話端末をリリースするためには、通信キャリアから提供された膨大なテスト項目を消化する必要があり、現場は典型的な「労働集約型」の構造となっていました。 急増する人的リソースの需要と人件費の高騰に対応するため、安価な労働力を求め、中国などへのオフショア(アウトソーシング)活用が急速に進みました。 当時のQAエンジニアには、テスト技術そのもの以上に、国内外の大量のテスターを束ねる高度な「テスト管理能力」が求められました。
スマホとクラウドの時代(2010年代〜2020年頃)

こうした環境の激変に伴い、開発プロセスも従来のウォーターフォール型から、スピードと柔軟性を重視したアジャイルやDevOpsへと進化しました。さらに、コロナ禍がリモートワークを定着させたことで、IT業界は場所や環境に縛られない働き方へと完全にシフトしたのです。
ℹ️ 主な出来事
- LINEサービス開始(2011年)
- freee設立(2012年)
- PayPayサービス開始(2018年)
- Selenium Conferenceが日本で開催(2019年)
- 新型コロナウィルス(2020年〜2023年)
💡QAエンジニアの変革
この頃になると、「QAエンジニア」という職種がようやく認知されるようになってきました。 QAエンジニアの役割も、開発の最終工程でバグを見つけるのではなく、設計や実装段階(工程の左側)から関与し、「バグを作り込まない開発」を主導するシフトレフト(Shift Left)のスタイルへと変わってきました。
Agile開発やDevOpsの普及による高速なリリースサイクルに対応するため、手動テストからSeleniumやAppiumを用いた自動化への移行が不可欠となりました。その結果、テスト基盤の構築やコーディングができるQA(SET/SDET)の需要が急速に高まりました。
AI時代(これから〜)

AI(人工知能)の研究自体は長い歴史を持ちますが、私たちの生活を一変させたのは、やはりChatGPTの登場以降と言えるでしょう。現在では、若者の間で「チャッピー」という愛称で呼ばれるほど親しまれており、私たちの日常に「当たり前」に溶け込んでいます。当初は「チャット(対話)」が中心だったAIの活用領域は、画像・動画生成、音楽制作など多岐にわたる分野へと急速に拡大しています。
そして今、最も注目されているのが「Agentic AI(自律型AI)」です。これまでの「人間が指示をして、AIが答える」という関係から一歩進み、「目標や目的だけ伝えれば、AIが自分で考えて実行する」段階へと突入しました。
自律型AIは「24時間365日文句を言わずに働く、優秀なジュニアエンジニア」と形容されることも多く、ソフトウェア開発とは非常に相性が良いといえます。これからは、AIを「使う」時代から、AIに「仕事を任せる」時代へ向かっていくでしょう。
ℹ️ 主な出来事
- ChatGPT(GPT-3.5)公開(2022年 11月)
- Gemini(Google) 登場(2023年 12月)
- OpenAIがSoraを発表(2024年2月)
- ChatGPT(GPT-4o)リリース(2024年 5月)
💡AI時代における「新しいQAエンジニア」の姿とは?
AIの進化とともに、開発エンジニアとQAエンジニアの境界線は限りなく曖昧になっていく気がします。
freeeでは、QAエンジニアがバグの発見から修正コードの実装、確認までを一気通貫で行う取り組みを始めています。現在は限定的な範囲ですが、AIのコード生成能力が向上すれば、より複雑な不具合修正もQAだけで完結できるようになるでしょう。
本来、QAエンジニアは以下の強みを持っているはずです。
- 誰よりもプロダクトの仕様を理解している
- どうすれば品質を高められるかを知っている
- 出来上がったものを自分自身で評価できる
- 常に顧客視点を持っている
唯一欠けていたのは「コードを書く技術」だけでした。 もし、AIによって「誰でもコードが書ける」時代が来るならば、最も品質の良いプロダクトを最速で作れるのは、実はAIを武器にしたQAエンジニアなのかもしれません。
また、AIの進化によって「仕様通りに動くもの」を効率的に作る難易度は格段に下がりました(当たり前品質)。しかし、それは同時に、開発のコモディティ化をすすめることになり、他社との差別化が困難になることも意味します。「使い勝手がよい」「思わず使いたくなる」「人に勧めたくなる」といった付加価値(魅力的品質)を提供するためには、まだまだ、QAエンジニアとしてやらないといけないことがありそうですね。
…知らんけど😅
まとめ

時代とともに技術が変われば、QAエンジニアに求められるスキルも変わります。もちろん技術の研鑽は不可欠ですが、それ以上に大切なのは、変化を楽しめる「好奇心」と、過去の経験にとらわれずに自分を変えていく「アンラーニング」の力ではないでしょうか。
昨年、80歳になる義父がたった1人で世界一周の旅に出ました。それだけでも驚きですが、なんと旅のプランはすべてAIを駆使して作成したそうです。
いくつになっても、新しい道具を使いこなし、未知の世界へ飛び出せる。変化を恐れず、常に自分をアップデートし続ける姿勢こそが、この激動のIT業界を生き抜くための羅針盤になるのだと教えられた気がします。
さて、今年のAdvent Calendarもいよいよ大詰めです。明日は、四半世紀の付き合いになる知人で一緒にフリーのQA組織を作ってきた戦友でもある、ゆもつよ(ymty)さんが「freeeのQA組織の現在地とこれから」について記事を書いてくれます。お楽しみに〜!
それでは、良い品質を〜 😄
