こんにちは、freeeでQAマネージャーをしているymty(ゆもつよ)です。昨年(2022年)、QA人材育成とQA標準化という活動を始めました。その活動の中で、QAスキルアセスメントシートを作り、実際に適用した結果も出たので、広く共有したいと思い、この記事を書くことにしました。
「QA人材の育成」を始めた理由
freeeの今後の成長に伴い、新規プロダクトの開発や既存プロダクトの拡張といった、開発規模が拡大していくことが予想されます。拡大と共にQAメンバー増やさなければならないときに、常にQAの経験と実力を兼ね備えた人材だけを採用するのは難しいです。なので、ポテンシャルのある人材をできるだけ内部で育ててくことができるようにしていく必要がありました。
また、QAの経験と実力を兼ね備えている人材を採用できた場合でも、freeeに入って爆速で活躍してもらえるようにしたいという思いもありました。そこで、オンボーディングで、freeeのQAならではのことを整理して伝えることができるようにまとめておくと効率良くなります。
さらに、プロダクトごとにアウトプットが違ったり、テストの仕方が違うと、せっかくオンボーディングでfreeeのやり方だと言って伝えても「あれ、現場入ったら違うじゃん!」ってなってしまいますので、そういうギャップが発生しない標準化が必要です。
プロダクトごとにやりかたが違うことを許容すると、オンボーディングで伝えることがプロダクトごとに変わってしまい、マテリアルを揃えるのも難しくなります。
そのため、 「QAのテストの標準化」 も育成とセットで行うことにしました。
標準化には別のねらいもある
標準化は、人材の流動を容易にするメリットがあります。例えば今年は会計のQAをしていたのだが、来年からは人事労務のQAをすると言った時に、どちらのQAでテストをするときにも進め方と成果物が同じであれば、移動が楽になります。(もちろん、業務知識やシステムの知識は異なるので覚えなければいけませんが、それだけで済みます。)
人材の流動が容易にできるかは、各自のメンバーが新しいチャレンジをするのにも有効であり、休暇などで人が一次的にたりない時のカバーもできるようになるため、そういうことが可能な組織の力としてもとても大事な要因になります。
標準化で特に大事にしたことは「アウトプットの標準化」に徹して、「作業の細かい手順は自由にやってもらう」ということです。作業の細かい手順までマニュアル化するような標準化はQAエンジニア一人一人の足かせになるのでNGです。標準化することがQAエンジニアのパワーを本来使うべきところに注ぎ込むことができるようになっていることが大切です。
何を標準化するか?はとっても大事なので、もう一度書きます。↓
手順を標準化するのではなくアウトプットを標準化する
QA人材育成で必要になること
QA人材育成をしていく上で、必要になることは、以下の3つになります。また、人材育成をする上で課題になることと、それに対して必要になることを決めました。
1.育成する時に「何を教えるのか、どこまで教えればいいのか?」を明らかにする
教える内容を整理するために、QAエンジニアのスキルラダーが必要になります。スキルラダーとは、能力開発のシステムを指します。梯子のように一つひとつのステップを上るように設定された制度で、その一つひとつのステップにはそれぞれ仕事の内容が定義されています。
また、自分がラダーのどこの位置にいるかが判断できるスキルアセスメントシートが必要になります。スキルアセスメントシートには、仕事の内容を定義します。
2.入社後、まず最初に覚えることだけ抜き出して一覧にし、学びやすくなる
QAに配属されたときのオンボーディングで学ぶことの一覧が必要です。この一覧とスキルアセスメントシート各項目をトレースし、オンボーディングで伝えられることと、そうではないことを明確にします。
3.覚えた内容が、すぐに実際に現場で使えるので、爆速スタートが可能になる
成果物の標準化が必要です。そのためには成果物を作る活動が明確になっていないといけないので、結果的にQAの標準テストプロセスが必要です。
以降は、人材育成と標準化で必要になる3つのことから「スキルアセスメントシート」にフォーカスして説明していきます。
QAスキルアセスメントシートのフレームワーク
QAスキルアセスメントシートを作るにあたり、フレームワークを最初に考えました。フレームワークは以下で構成されます。
- スキルラダー
- ロールカテゴリ
- 評価軸
- スキル項目
QAエンジニアのスキルラダーの定義
5段階のスキルラダーを決めました。これはJaSSTTokai2022にてアマゾンのQAにいる植月さんの講演を聞いて、そのまま使うことにしました。
- QAテスト担当
- ジュニアQAエンジニア
- ミドルQAエンジニア
- シニアQAエンジニア
- プリンシパルQAエンジニア
各スキルラダーで必要となるロールを定義
アセスメント項目を作るにあたり、項目をグルーピングするロール(役割)カテゴリを決めました。
- 手動テスト実行
- テスト環境準備
- ツールを利用したテスト実行
- 自動テスト作成
- テストの作成(テスト分析、テスト設計)
- テストプロセス
- テストマネジメント
- 品質改善
各スキルラダーのイメージをすり合わせるためにざっくりどんなことができる人かを話し合って決めました。
スキル項目と評価軸を決めてアセスメント可能にした
スキル項目と評価軸を決めてスキルアセスメントシートを作成し、メンバーが自分自身でアセスメントできるようにしました。セルフ評価の軸としては「各スキル項目に対する自立性」で判断することにして、4つの段階をつけました。
自立性の評価軸
3:サポートは不要、かつ、人のサポートができる
2:サポートは不要
1:サポートも必要だが基本的には自分でできる
entry:サポートありきで作業ができる
スキル項目
スキル項目は以下になります。freeeの中ではもう少し具体的に項目の内容を記載していますが、公開するにあたり、汎用的な言い回しに変更しています。
スキルラダー:QAテスト担当
ジュニアQAエンジニア
ミドルQAエンジニア
シニアQAエンジニアとプリンシパルQAエンジニア
シニア以上はまだ作成中です。
セルフアセスメントの実施結果
上記のフレームワークで作ったスキルアセスメントシートを使って、QAメンバー全員にセルフアセスメントをしてもらいました。
セルフアセスメントの内容の人ごとのばらつきは厳密には判断できませんが、あきらかに違うと思われる場合は、マネージャーからサポートしてもらうようにしました。
QA組織としてのレベルを見るために、4段階の評価のうち、「2:サポートは不要、3:他者へのサポートできる」と自己評価してある数の比率をアセスメント項目毎に集計しました。
アセスメント項目毎の集計結果の平均を、ロールカテゴリごとの比率として出して、70%以上の人が自立してその作業ができる(2:サポートは不要以上)のであればOKで、70%を切るのであればテコ入れが必要で、50%を切る場合は、まだ組織としてみんなができるとは言えない状況だと判断できるとしました。そして、スキルの向上のために、QA組織としては、全体的に評価が低い項目の勉強会を行ないました。
また、最初のアセスメントを行なってから入社した新しいQAメンバーには約3週間のQAオンボーディングを行い、QAテスト担当者やジュニアQAエンジニアとしてfreeeで仕事ができるようになるための知識を伝えてすぐに実践に入れるようにしました。
アセスメント結果はどうなった?
最初のセルフアセスメントは、2022年の6月に行いました。そして、半年毎にセルフアセスをしてもらい成長の度合いを確認することにしました。
以下のグラフは、自立してその作業ができる(2:サポートは不要以上)という自己評価になっているアセスメント項目が全体の何%となるかで初回と2回目の比較をしています。
半年間の間にQAメンバー人数は約2倍になったのですが、スキルアセスメントの結果は半年前より向上していました!
まとめ
スキルアセスメントシートを実際に適用してみて、自分たちのスキルの可視化ができたことはとてもよかったと思ってます。 しかし、スキルアセスメントシートを適用しだしてまだ6ヶ月なので、これからさらにスキル項目のブラッシュアップや、スキル項目の評価を向上させる施策を行い、更に強いQA組織を目指していこうと思います。
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