RubyWorld Conference 2025 参加レポート
こんにちは!freeeでアプリケーションエンジニアをしているおっそーです。
このたび2025年11月6日・7日の2日間、島根県松江市の「くにびきメッセ」で開催された「RubyWorld Conference 2025」に参加してきました!本記事では、カンファレンスの雰囲気や印象的だったセッションについてレポートします。

RubyWorld Conference とは
RubyWorld Conference は、Rubyの生みの親であるまつもとゆきひろ氏の地元・島根県で開催される国際的なRubyカンファレンスです。技術的な深掘りだけでなく、組織運営やビジネス、地方創生といった幅広いテーマが扱われるのが特徴です。
DAY 1 のハイライト
基調講演:Sanarei - Offline Web Browsing with Ruby
アフリカ・ナイロビから来日されたBantab氏による基調講演では、金融サービスにアクセスできない14億人の課題に Ruby を活用して挑む取り組みが紹介されました。
背景
- 世界で14億人の成人が銀行口座や金融サービスにアクセスできていない
- この層の多くは、インターネット接続ができないフィーチャーフォン(ガラケー)を使用
- USSDプロトコルを介した基本的な通話やテキストメッセージに依存
Rubyの活用
- USSDアプリケーションのコンポーネントベースアーキテクチャ構築
- オフラインウェブブラウザ「Sanarei」のミドルウェア開発
- 160文字制限のUSSDでウェブコンテンツを「パケット」分割して送信
デジタル世界から切り離された人々にアクセスを回復させるという、スケールの大きな社会課題への挑戦が印象的でした。
スケールする組織をモジュラーモノリスで制する
株式会社アンドパッドの大崎氏による発表では、組織の成長に伴うシステムとチーム構成の課題について語られました。
コンウェイの法則と逆コンウェイ戦略
| 名前 | 説明 |
|---|---|
| コンウェイの法則 | 組織構造がシステム設計に反映される |
| 逆コンウェイ戦略 | 理想的なシステム構造を先に設計し、それに合わせて組織を構成 |
モジュラーモノリスの利点
- システムの依存関係を可視化
- 適切なチーム編成を可能に
- 継続的な改善を行うチームの作成を支援
- CIコスト削減などの定量的なメリット
組織設計とシステム設計を一体的に考えるアプローチが興味深かったです。
高信頼性システムにおける複数言語の活用
ブルーモ証券の事例では、RubyとGoを組み合わせた証券システムの構築が紹介されました。
技術選定
| 選定技術 | 責任領域 |
|---|---|
| Ruby on Rails | 顧客データ管理、API、管理画面など変更が多い領域 |
| Go | 資金管理、取引、ポートフォリオ管理など整合性が重視される領域 |
学び
- システム境界が明確化され、責任範囲がはっきり
- デプロイの独立性、変更影響の局所化を実現
- 一方で統合テストの難しさや、二言語運用のコスト増といった課題も
適切な技術を適材適所で使い分ける実践的な事例でした。
その他の印象的なセッション
| タイトル | サマリー |
|---|---|
| 東京ガスグループの地震防災システム | ⚫︎「SUPREME」というリアルタイム地震防災システムでRubyを活用 ⚫︎24時間365日稼働が求められるシステムで、Rubyの開発生産性を活かしてテスト時間を確保 ⚫︎Rubyの標準機能で高可用性を実現 |
| メドレーのDEINTIS(歯科業務支援システム) | ⚫︎日本の複雑な保険診療制度に対応 ⚫︎interactor gem を活用した複雑なビジネスロジックのカプセル化 ⚫︎2年に一度の診療報酬改定に継続的に対応 |
普段 Web アプリケーションの開発しかしていないこともあり、Ruby が Web 以外の幅広い領域で活用されていることを実感できる一日でした。
DAY 2 のハイライト
基調講演:Rubyコミュニティの30年(まつもとゆきひろ氏)
Rubyの生みの親であるまつもとゆきひろ氏による基調講演では、Rubyコミュニティの歴史と未来について語られました。
コミュニティの成長
- 1995年12月21日、Ruby 0.95のリリースとメーリングリスト開設
- ユーザーからのバグ報告や機能提案、パッチ提供によって進化
- 世界中でのカンファレンス開催、国際標準規格(JIS X 3017)への制定
現在の課題
- RubyGemsなどの管理コスト増加
- セキュリティ対応の負荷
- コミュニティ規模拡大に伴う財政難
Ruby 4.0への展望
- 今年リリース予定の Ruby 4.0(30周年記念)
- AIを活用したコア開発への貢献の可能性
まつもと氏は、Rubyがフリー(自由な)ソフトウェアとして存続するために、コミュニティへの自発的な貢献(労力・資金・人材)を呼びかけていました。そして最後に、「エンジョイプログラミング(プログラミングを楽しんで )」というメッセージで講演を締めくくりました。
サマリーは味気なくなってしまいましたが、Ruby リリース当初の話や海外カンファレンスの失敗の話、陰謀論と称した Ruby コミュニティの危機の話を含め、とても楽しい講演でした!
また、「プログラミングを楽しんで」というメッセージも印象的でした。最近チームの方が「Ruby をきっかけにプログラミングを楽しいと思うようになった」と言っていたり、新卒未経験エンジニアだったわたし自身も最初に触れた Ruby で「簡単に動いた...!!!楽しい...!!!」と思ったりと、まつもと氏の伝えたかったことを Ruby を通して受け取った人はこの世界にたくさんいるんだろうなと思いました☺️
PicoRuby の世界
PicoRuby関連のセッションが複数あり、会場が大いに盛り上がりました。 登壇者の半数以上、講演時間の半分以上がPicoRuby関連で、もはや「PicoRuby World 2025」と言われているのも面白かったです。
PicoRubyとは
- マイコン向けの軽量Ruby実装
- ドラッグ&ドロップで簡単にセットアップ可能
- 標準ライブラリが充実(IRB、UNIX風シェル、HTTPSなど)
活用事例
- キーボードファームウェアの開発
- ラジコン制作
- FMラジオ制作
- アート作品 (⁉️)
羽角氏の「Lチカは情操教育」という名言(?)とともに、電子工作の楽しさとプログラミングの喜びが伝わってくるセッションでした。教育機関への原価提供など、普及活動にも力を入れているとのことです。
弊社からは hachi さん ( @hachiblog ) が 「PicoRuby で拓く電子工作の世界」というタイトルで登壇しました。 会社のことには一切触れず、PicoRuby の良さを熱く語ってくださいました(笑)

hachi さんは今後もPicoRubyをさらに簡単にすることを目指しているそうです!カッコイイ😎
RubyでLLMアプリケーション開発を支える基礎技術
株式会社永和システムマネジメントの伊藤氏による、RubyとLLMに関する技術整理の発表です。
| 重要技術 | 説明 |
|---|---|
| RAG(Retrieval-Augmented Generation) | LLMの知識不足を外部データベースで補完 |
| Langchain.rb | 複数のLLMを統一的に扱うRubyフレームワーク |
| MCP(Model Context Protocol) | LLMが外部ツールを安全に利用するための標準プロトコル |
Ruby × LLMの未来
- MCP Ruby SDK は、サーバー・クライアント両方のSDKが揃う唯一の言語(2025年11月時点)
- PythonがAI領域で先行しているが、Rubyにも十分なチャンス
- MCPサーバーをRubyで作ることで、Ruby処理系の普及が進む可能性
RubyエンジニアがAI開発領域に貢献できる余地がまだまだあることが分かりました。
その他のセッション
| タイトル | サマリー |
|---|---|
| 忍者式テストの「本日のおすすめテスト」アルゴリズム | ⚫︎受け入れテストレベルでのTDD実践 ⚫︎膨大なテストケースを「ある期間で満遍なく回す」戦略 ⚫︎新規・問題箇所を優先しつつ、システム全体を網羅的にテスト |
| 台湾語の複雑なテキスト処理にRubyを活用 | ⚫︎複数の文字体系が混在する台湾語をRubyでパース ⚫︎Parsletライブラリを活用 ⚫︎台湾語コーパスシステムとして一般公開 |
| メタプログラミングRuby問題集の活用 | ⚫︎実習形式の問題集をGitHubで公開 ⚫︎ruby.wasmを活用したWeb版メタプログラミングRuby問題集を開発 ⚫︎英語版にも対応 |
社内に公開した学びの共有ブログではもっとたくさん書いていますが、長くなっちゃうのでこの程度で😏
ぜんぶ非常に面白いセッションでした!
全体を通しての感想
技術の多様性
Rubyは単なるWeb開発言語ではなく、以下のような幅広い領域で活用されていることを実感しました。
- 金融システム(オフライン環境での金融サービス、証券システム)
- 社会インフラ(地震防災システム)
- 医療(歯科業務支援システム)
- IoT・電子工作(PicoRuby)
- 自然言語処理(台湾語解析)
コミュニティの温かさ
カンファレンス全体を通して、Rubyコミュニティの温かさと「プログラミングを楽しむ」という文化を強く感じました。技術的な深掘りだけでなく、組織運営やキャリアチェンジ、教育といった人間的な側面も大切にされているのが印象に残っています。
地方創生との結び付き
島根県とRubyの協力関係、IT人材の育成や企業誘致など、技術コミュニティが地方創生に貢献している様子も印象的でした。
松江の魅力
技術カンファレンスとしての充実度はもちろん、松江の食や文化も楽しめました😋
おいしかったもの
- しじみの酒蒸し
- 新鮮なカワハギやのどぐろのお造り
- レバーの塩焼きと日本酒

宍道湖の夕日も有名ですが、今回は惜しくも沈む直前に到着…次回のリベンジを誓いました。

まとめ
RubyWorld Conference 2025は、技術的な学びだけでなく、Rubyコミュニティの多様性と温かさを体感できる素晴らしいカンファレンスでした!
持ち帰れた知見
- Rubyの幅広い活用領域(金融、医療、IoT、AI等)
- 組織とシステムの設計を一体的に考えるアプローチ
- コミュニティ駆動の開発とオープンソースの持続可能性
- LLM時代におけるRubyの可能性
来年もまた参加したいですね!
Rubyに興味がある方、特に「プログラミングを楽しみたい」という方は来年の開催をぜひ楽しみに待ちましょう❤️
