
【自己紹介】
スモールプロダクト戦略チーム エクスペリエンスデザイナー niko
2021年入社。お菓子メーカーのマーケターからエクスペリエンスデザイナー(XD)として入社。新規事業や新領域の探索〜ソリューション作成・提示まで担当。(notプロダクトデザイン出身者)
スモールプロダクト戦略チーム プロダクトマネージャー mayuki
2017年入社。カスタマーサポートに5年間従事、現在はプロダクトマネージャーとして会計プロダクトのweb/mobile開発を担当。
「探索」フェーズのプロダクト開発、どうやって進めよう?
こんにちは、私達はfreeeのプロダクト開発チームで企画を担当しているniko&mayukiです。 これを見ている皆さんは、どんな仕事をされている方でしょうか?プロダクト開発に携わるプロダクトマネージャー、デザイナーやリサーチャー、企画も行うエンジニア、それとも探索に関わるプロジェクトマネージャー・・・今回の記事は、皆様のこんな場面でおすすめしたい内容です。
「探索的」な新プロダクト開発のプロジェクトを任されたけど、社内でも前例がない、自分にも解がない
納期が短い、探索を一緒に進めるメンバーも少ない。でもプロジェクトを進めなくてはいけない
【※「探索」とは?】 一般にイメージされる『解くべき課題を見つける』だけでなく、『最適な要件を探り当てる』プロセスのこと。具体的には『そもそもこの機能要件で、ユーザーの業務が回るのか?』を確認する『要件定義のためのプロトタイピングやユーザーテスト』を指す言葉として用いています。リサーチにおける検証(使いやすさを確認する、ユーザビリティテストなど)との違いを伝えるため、この表現を使っています。
本記事では、何かと不確実な「探索」プロジェクトでも爆速で進めることができる「AI時代のデザインプロセスの最適解」をお伝えしていきます。 AIを使って社内外の合意形成(ステークホルダー・マネジメントおよびユーザーテスト実施)のサイクルを高速化し、アウトプットを4倍にしたリアルな姿を余すところなくご紹介します!
探索プロセスは議論に時間がかかりがち
さて、通常のプロダクトマネジメントのプロセスを以下に示しました(会社やプロジェクトによって違いがあり、専門書などで紹介される工程もあると思いますが、ここでは目的に即してざっくりと示すことをお許しください)。
freeeでは、上長や他部署から同期的にフィードバック(以下FB)をもらいながら進めることが多く、承認プロセスは少ないが一定発生しています。会社や部署によっては、工程ごとに合意をもらったり、上長+上長の上長+上長の上長の・・というように毎回複数人の承認を順番に得る場合もあるのではないでしょうか?

探索プロセスでの課題点
企画立案〜プロトタイプ作成までの「探索プロセス」では以下のような課題が発生しがちです。
プロダクトマネージャー視点
- デザイナーに微妙なニュアンスを伝えきれずに、何度も修正指示が必要
- 各工程でステークホルダーから色んな意見をもらってしまい、要求やスコープをまとめきれない
- ラフにお願いしたが、思ったより時間がかかってなかなか上がってこない
プロダクトデザイナー視点
- PdMの依頼が抽象度が高すぎて、要求や要件を補ってみるも手戻りが発生する
- 限られた時間でなんとか進めたが、案に自信が持てないまま進んでしまう
- 各ステークホルダーからの指摘をもらうたびにデザインを微調整して疲弊
また、今回のプロジェクトには以下のような制約条件が存在していました。
プロジェクトの制約
- 「freee会計」というコアプロダクトの「コア機能」の開発:深い専門知識が必要で、利用者・社内外のステークホルダーが多い
- 「ユーザーにとってより使いやすくなる」ための開発:シンプルかつわかりやすい操作性が必要。ユーザーが実際に使えるかを早期に確認したい
- 期間が短い: 課題自体は長年社内で認識されており、過去に色んなトライがされてきたからこそ、短期間で具体的な方向性を示す(Quick winを出す)必要があった
従来のプロセスだと、合意形成の工程が多くユーザーリサーチ完了までに半年ほどかかる想定でした。「Quick win」 と「アウトプットの作り分け」に工数がかかることのジレンマが発生します(例えば、社内メンバー向けにはスピード重視で雑にイメージが湧くものからはじめるが、ユーザーテストでは実際の体験がイメージできるものを別途作る必要がでてくる)。
どう解決できるか?
今回は、「3ヶ月」で社内での合意形成とユーザーにとって「確度の高い要件やUI」を見つけることがミッションです。
ミッションを達成したいが従来の進め方では達成できない…。
このジレンマを突破する解は、社内の合意形成段階から、「ボタン操作や画面遷移ができるプロトタイプ」を「AIで」作ることでした。
今回のトライを「AI生成プロトタイプ」と呼び、以下に特徴を表してみました。※「プロトタイプ」という言葉の範囲が、人や会社によって違うだろうと思いつつ書いています。

実はこれ以前に、限られたリソースでどうプロジェクトを進めるかについて悩んでいたmayukiは、当時の上司と「デザイナーはいないけど、nikoさんがいい感じにAIで高速でプロトタイピングとUTしてくれないかな〜?」と冗談交じりに話をしていました。上手く行くかはわからないけど、ここはいっちょAIを活用してみたらなんとかできるかもしれない?!と、最初はそんな「ノリ」でやってみたアプローチでした。
AIを「作業アシスタント」から「作業者」に
freeeの社内ではかなりAI活用が進みつつありますが、企画では情報整理や構成をGeminiに相談したり、報告資料の叩きを作成したりと、あくまで作業者の作業時間を短縮する「作業アシスタント」的な役割でした。 今回画期的だったのは、AIに「作業者」を担ってもらい、人が伴走相手としてFBをする形で進めたことです。 具体的には、geminiやfigma makeを利用して自然言語でプロンプトを書きました。途中、手書きのイラストなども指示として使いましたが、AIが意図を汲み取ってプロトタイプを作成してくれました。以降の工程にも充分活用できたと感じています(25年8月時点の個人的な所感)。

AIで「合意形成」が格段にスピードアップ
今回、上記の手順で作成した「AI生成プロトタイプ」を3つの場面で使用しましたが、非常に汎用性の高い使い方ができることに気づきました。
- 現場のチームでの作業(要求〜プロトタイプ作成まで)
- 経営層や他部署メンバーとの合意形成
- ユーザーテスト
全ての場面において、作成スピードの短縮だけでなく、議論の密度が増し、制作物の質も高まった実感があります。具体的には以下のようなメリットがありました。
作業者がAIなので、忌憚のない意見が言いやすい
人が一生懸命作ってきたものにケチを付けるのは心が痛むものです。AIが作ったと分かれば、遠慮せず好きなだけ意見を言うことができます
「動くもの」で具体的な議論ができる
何かを作ろうとした時、アイデア・ 言語化・具体化を行き来しますが、具体を見ると改善案が格段に出やすいと感じました。想像上のものより、既に実在するものを見た方がすぐに文句が思いつきますよね?
シンプルにみんながワクワク!熱量があがる
具体的な議論ができると、皆が同じ目線で議論に参加できます。そしてワクワクします。メンバーも、経営層も、ユーザーも、ソリューションを皆で直しているので、熱量がこもり「みんなで作った」ものになる実感がありました。
ユーザーテストは濃度4倍
社内の合意形成だけでなく、ユーザーテストでは更に効果を発揮しました。1つのプロトタイプでテストをする場合、4パターンを試すには最大4サイクル必要になりますが、今回は途中で修正しながらテストできたため、1回のリクルーティングで4パターンの検証ができました。 倍速でプロトタイプの精度が上がっていくので、より自信を持ってデザインや開発に落とすことができました。
ちなみに、今回はAIのドラフトを元に、PdM&リサーチャーでブラッシュアップしましたが、PdMはドメインやプロダクトとしてこう使ってほしいという視点、リサーチャーはリサーチ結果を元にしたユーザー視点という役割分担をしていました。つい作り手視点に寄りがちですが、AIが作業者となることで複数の客観的視点を持って進められました。もし、チームにリサーチャーがいなくても、多角的なアドバイスをくれる人を巻き込むと効果的だと思います。多角的視点をリアルタイムに入れることで、ユーザーにとって使いやすいフローに修正しやすくなります。この辺りもアウトプットの質を向上するのに良いアプローチだったかもしれません。
探索プロセスの期間は 1/4に
結果、要求定義以降のプロセスが圧倒的に短縮されました。本来はドキュメント→ワイヤーフレーム→モック→プロトタイプなど、その時々の意思決定者に合わせたアウトプットを用意して議論する必要がありますが、今回はユーザー向けのプロトタイプ一つで充分でした。通常は5ヶ月〜6ヶ月かかるところを1.5ヶ月で終わらせることができました。

【こぼれ話】わりと重要!AI共創する土台の「ならし」作業
実は、上記でお伝えした工程の前に「課題探索〜仮説立て」を行っており、ここで「場を暖める」ことをしました(後出しですみません)。具体的には、経営層や他部署のステークホルダーを集め、全員でユーザーの一次情報を得る「同じ夕日を見る」会を開催しました。「この課題を絶対に解決したい!」という全員の熱狂は、この時生まれたものだったと思います。この作業があったため、プロトタイプを皆で見て適切なFBができたとも言えます。

「探索」フェーズこそ、with AIでプロジェクトを爆速化しませんか?
AIはもはやアシスタントではなく、一緒に働く作業者であり、チームの議論を活性化させ、最短で着陸させることができるツールです。最速のスピードと、アウトプット最大化に役立つ手法ですので、皆さんもぜひ実践してみてください!
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今日の記事の本編では、実際に行ったやり方・tipsを詳しくお話しします。好評につきリアル参加は枠がいっぱいになってしまったようですが、オンライン視聴もできますので、熱狂と即決を伴った爆速プロダクト開発をしたい方、ぜひご視聴ください! freee-tech-day.freee.co.jp
