こんにちは。支出管理領域のQAマネージャーをしているrenです。 2025年4月に行われたICST 2025の併設ワークショップInSTA 2025に事例論文が採択され現地発表してきたので、発表までの経緯や開催地の様子をレポートします。
ICSTの紹介
ICSTはIEEEの国際カンファレンスで、International Conference on Software Testing, Verification and Validationの略です。ICST 2025の開催地はイタリアのナポリで、海岸沿いのコングレスセンターが会場でした。

ソフトウェアテストに関するカンファレンスで、今回のKeynoteではAppleのDistinguished EngineerであるAtif Memonさんや、GSSIで教授を務められているAntonia Bertolinoさんが講演してくださりました。
今回は、このICSTの併設ワークショップであるInSTA (International Workshop on Software Test Architecture) に出した論文が採択されたため、現地で発表してきました。
何を発表したか
今回私は「Enhancing SaaS Product Reliability and Release Velocity through Optimized Testing Approach」という題の論文を投稿し発表してきました。
内容は、フリーの支出管理領域でのテスト活動の成果について、その方法論と成果をまとめたものです。
ゆもつよメソッド*1に基づいてテスト対象を分析した結果とSUTのアーキテクチャとの関連を明らかにし、テスト設計に対して重篤度定義*2とテストサイズ分類*3の考え方を適用することで、一貫性のあるテストスイート導出を実現する方法論と、その結果得られたリグレッションテスト工数の9割削減という成果を論文としてまとめました。
師匠であるゆもつよさんとの共著論文という形で出しており、たくさんレビュー頂いたおかげで無事採択されることができました。
なぜ論文投稿しようと思ったのか
QAエンジニアになり始めた頃から、JaSST*4やQues*5のようなQAに関するイベントによく参加しに行き、色んなことを学ばせていただいていました。
そういったイベントに繰り返し参加していく中で、次第に「世界のトップエンジニアたちは今どんなテーマに取り組んでるのだろうか」ということに興味を持ち始め、海外カンファレンスの開催情報やアーカイブを調べるようになりました。
どうせなら、日本でこんなことやってるんだぞ!っていう武器を持って海外カンファレンスに参加したいなと思い、1年ほど前から海外カンファレンスへの登壇自体に意欲を持ち始めていました。
そのため、実はICSTのInSTAに論文投稿する前に、Agile Testing Daysにプロポーザルを出したり、ISSREに論文提出したりしていました。
Agile Testing Daysには、当時自分の中で一つの型として身につけられつつあったBackend QA*6というQAスタイルについてのプロポーザルを出しましたが、そのときのhot topicから外れていたこともあり、落ちてしまいました。
その後、ISSREという信頼性工学に関する国際カンファレンスがつくばで開催されることをゆもつよさんから教えていただき、このISSREに、今回と同じ方向性の論文を提出しました。
残念ながらISSREでは不採択となってしまったのですが、方法論の提案として不足している点や、主張の書き方が不十分で正しく伝えきれなかった点など、多くの学びを得ることができました。
ISSREの不採択通知を受けたときに「またいつか挑戦したい」とゆもつよさんと話していたのですが、その3ヶ月後くらいには「InSTAっていうテストアーキテクチャをテーマとしているワークショップがあるから、ここに挑戦してみないか?」と再びゆもつよさんに背中を押していただき、今回の論文を書くに至りました。
結果、三度目の正直となりましたが、めげずに挑戦し続けて良かったです…。
ICSTに参加しての学び
ICST 2025にはソフトウェアテストに関する多種多様な論文が投稿されており、最近のhot topicであるLLMに関する論文も多数投稿されていました。
個人的に特に面白かったのが、Test Generation from Use Case Specifications for IoT Systems: Custom, LLM-Based, and Hybrid Approachesというshort paperでした。IoTシステムに関する論文ですが、内容はLLMを活用しながらユースケース記述からテストを生成するというもので、SaaSアプリケーションにも適用可能なアプローチが多く提案されていました。
今回の論文投稿をきっかけにソフトウェアに関する論文をよく読むようになり、事例論文やshort paperからは最新のAIモデルを踏まえた事例や実践しやすいアイデアを、研究論文からは体系だった考え方や手法の良し悪しを知ることができています。
普段の業務でやってみたいと思うことの幅も増えてきていると感じており、この点も、論文投稿に挑戦して良かったポイントでした。
イタリア観光
観光する時間も多少あり、開催地のナポリ近郊の歴史的な建造物を見に行ったり、たくさんピザを食べてきました。
イタリアの食べ物はどれも美味しくて、またいつか旅行で行きたいと思いました。

7月9日(水)に、今回の論文をLayerX様のオフィスでお話する機会をいただきました。この記事を見てもっと詳しく知りたいと思ってくださった方は、ぜひご参加くださいm
agiletalks.connpass.com

フリーのQAでは一緒に働く仲間を募集しています!興味を持っていただいた方は、応募サイトからご応募お待ちしています!
*1:フリーでQAマネージャーをしている湯本剛さんが提唱しているテスト分析手法 https://note.com/yumotsuyo/m/maa0d15fb27e8
*2:バグの尺度としてフリー社内で使われている概念 https://developers.freee.co.jp/entry/freee-qa-advent-calendar2024-day8
*3:Googleが提唱している自動テスト分類 https://testing.googleblog.com/2010/12/test-sizes.html
*4:NPO法人ASTERが運営するソフトウェアテストシンポジウム https://jasst.jp
*5:ヒューマンクレストが運営するQA専門イベント https://quesqa.com
*6:Backend QAについて過去に書いたテックブログ記事 https://developers.freee.co.jp/entry/freee-qa-advent-calendar-day11