こんにちは、 freeeでデザインシステムを作っていたりアクセシビリティーのいろいろをやっていたりする id:ymrl です。
freeeではfreeeアクセシビリティー・ガイドラインを策定して、誰でも使えるアクセシブルな製品開発ができるよう取り組んでいます。これまでも、開発者(エンジニア、プロダクトマネージャー、デザイナー)向けには実習を含むアクセシビリティー研修を行ってきました。
そしてこのたび10月から 対象を全新入社員向けに拡大 してアクセシビリティー研修を行うようになり、あわせて開発者向けの研修も内容を整理したので、今回はその紹介をします。
なぜ全員に研修をするのか
これまでのアクセシビリティーの取り組みは、プロダクト開発を中心に進めてきました。「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム」をビジョンに掲げている以上、まずは提供しているSaaSが誰でも使えるものになっていることが、freeeでアクセシビリティーに取り組む上で第一の目標だからでした。そのために、まずはエンジニアやデザイナーでボトムアップにアクセシビリティー改善を始めつつ、ガイドラインやチェックリストを作り、アクセシビリティーを担保しながら開発できるプロセスの整備をしてきました。これまで行っていた開発者向けの研修も、その一環としてのものでした。
また、直接的にプロダクトを開発している以外の部署でも、たとえばfreeeヘルプセンターで製品のヘルプを執筆しているチームもアクセシビリティーチェックを実施するようになったり、社内でのイベントでもアクセシビリティーを考慮した内容にアップデートしていたりし始めています。そういった中で、開発以外の部署にいる人たちへ、もっとアクセシビリティーのことを知ってもらい、考えてもらえる機会を作らないといけないよね、という話になっていきました。
freeeと社外とのコミュニケーションの舞台は、製品やそのヘルプはもちろん、製品を紹介するWebページ、セールスやマーケティングのために作成される資料、カスタマーサクセスやサポートのためのコミュニケーションといった様々なものがあります。それ以外にもさまざまなビジネスパートナーとのやり取りもあります。それらの場面でもアクセシビリティーの考慮が要らないというわけにはいかないでしょう。
加えて、社内に目を向ければ中根さん(@ma10)をはじめとする障害当事者のメンバーもいて、さらに最近では日本語のネイティブスピーカーではないメンバーも増えてきています。彼らがfreeeで最大限活躍できるよう、社内の情報環境のアクセシビリティーも考えていかなければなりません。そして、この先そういったメンバーの数はもっと増えていくはずでもあるのです。
これまでも、全新入社員が受講する職場のダイバーシティーに関する研修のなかで、アクセシビリティーに取り組んでいること自体は紹介してきていました。しかしその僅かな時間だけでは、アクセシビリティーというものが自分に関係のあることとして捉えられているだろうかという不安がありました。今回はじめた研修では、しっかりと時間をとってアクセシビリティーという考え方を紹介して、さらに自分たちの仕事のなかで取ることのできるアクションというかたちで、アクセシビリティーを自分ごととして捉えられるようになることを期待しています。
アクセシビリティー研修の構成
10月からのアクセシビリティー研修は、以下の3部構成となっています。
- アクセシビリティー研修 for All freeers(45分)
- アクセシビリティー研修 Basic (1時間)
- アクセシビリティー研修 Advanced (1時間)
このうち、アクセシビリティー研修 for All freeersが今回追加されたもので、入社オンボーディングの一環として、2021年10月以降に入社した、freee社内で働くすべてのメンバーに受講してもらっています。
アクセシビリティー研修 Basic とアクセシビリティー研修 Advancedは、アクセシビリティー研修 for All freeersの内容を前提として、Webページやアプリケーションの企画開発に関わる人向けの内容としています。いまのところ開発メンバー向けにBasicとAdvancedを続けて2時間の枠で受講してもらっていますが、ビジネス側のメンバーでWebページの企画などをやる人向けにBasicのみ切り離しての受講ができるように設計してあります。
アクセシビリティー研修Basicとアクセシビリティー研修Advancedでは、スクリーンリーダーやキーボード操作での体験のために、専用のページを用意しています。これは意図的にアクセシビリティーの問題がある実装を作り込んだもので、自覚的に悪いものを作るのはけっこう楽しかったりします。
https://freee.github.io/a11y-training
アクセシビリティー研修 for All freeers
アクセシビリティー研修 for All freeersでは、アクセシビリティーとは何なのか、なぜfreeeはそれに取り組むのか、freeeで仕事をする上でどんなことに気をつけるのかを取り扱かっています。途中で全盲の視覚障害当事者である中根さんによるスクリーンリーダーのデモを行い、おそらく受講者の多くが見たことがないであろう、視覚障害者が日頃どうやってWebに触れているのかというのを紹介しています。
個人的には、特に「テキスト情報のスクリーンショットのみで情報共有をすること」や「動画によるコミュニケーションは受け取る側の負担が大きくなりがちなこと」をこの研修に盛り込んでいることを重要に思っています。SlackやWorkplaceによるカジュアルなWebコミュニケーションが盛んな社風だからこそ、このあたりに意識を向けられるようになってほしいなと思っています。
アクセシビリティー研修 for All freeers(Googleスライド)
アクセシビリティー研修 Basic
アクセシビリティー研修Basicでは、キーボードによる操作や、実際にスクリーンリーダーを触ってもらうことを通して、アクセシビリティーの低い状態を体験してもらいます。その上で、freeeのアクセシビリティー・チェックリストとaxe DevToolsの使い方を紹介します。この内容はWebページ制作の企画や進行、そこに掲載する原稿の執筆などをする人が、そのページのアクセシビリティーを担保する上で必要な知識を身につけてもらえることを期待しています。ビジネス側のメンバーがWebの企画を行う場合にはデザインと実装を外部のパートナーに発注することも多いため、そこで必要となる知識を中心に構成しています。
アクセシビリティー研修 Basic (Googleスライド)
アクセシビリティー研修 Advanced
アクセシビリティー研修Advancedでは、より技術的な部分に踏み込んでいます。Chrome Developer Toolを使ってアクセシビリティーツリーを見る方法を紹介したり、リンクやボタンやフォームのよくある事例に触れています。freeeでWebアプリケーション開発に関わる人に、アクセシビリティーの評価と改善に向けたアクションの足がかりを習得してもらうことを期待しています。
アクセシビリティー研修 Advanced(Googleスライド)
アクセシビリティーを一緒に高めてくれるメンバーを募集しています
全職種に対してアクセシビリティー研修をはじめたので、どの職種として入社してもアクセシビリティーのことができます!と胸を張って言えるようになりました。
いま入社すると上記で紹介した研修を(もしかしたらもっとブラッシュアップされた形で)受講することができますし、特に開発系部署ではデザイン作成時やリリース前にアクセシビリティーチェックをするのも普通のことになってきています。アクセシビリティーに興味のある方はぜひご応募ください。