フルリモートの課題に真正面からぶつかったfreeeの2020年

freee のCEOの佐々木大輔 (@DiceSasaki) です。この記事は freee Developers Advent Calendar 2020 の11日目です。

freeeは3月からの休校要請を受けて、全社フルリモート(出社原則禁止)に移行しました。「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションのもと、これまで一体感の高い独自のカルチャーをつくってきたfreeeにとってのフルリモート実施は、早期に決断したものの経営者としては複雑な心境でした。

freeeの事業を考えれば「クラウドで場所を選ばず効率的に事業を進められるという姿を、むしろ自分たちが積極的に取り組んで示して、よいノウハウ等が生まれれば積極的に共有していくような存在にならなくてはいけない」と思いました。その反面、「これまで大事にしてきたカルチャーを失ってしまうのではないか」という懸念があったのです。

Workplaceの投稿のスクリーンショット
全社一斉リモートを社内に発信した時の佐々木の投稿

それでも、いつかは終わる危機であろうから、一旦フルリモートに全力でぶつかっていって、カルチャーづくりの懸念にも真正面からぶつかっていこうと決めて取り組んできました。最初のオンラインでの全社ミーティングでは、僕がfreeers(freeeの従業員)に話す時間にいきなり娘も乱入して、今ではあちこち見慣れた「BBC Dad状態」になり、どうなることやらと思いました。

全社ミーティングで喋る佐々木の背後に、ドアを開けて部屋に小さな女の子が入ってきている
全社ミーティングに乱入した娘。当日はひな祭りということもあり、背景にはお雛様

その後もオンラインで新卒の自己紹介を楽しみながら新卒社員を迎える「New社式」(おそらく多くの人は歓迎会がてら飲みながら楽しんだりしていたであろう)や、freeeが重要にしている価値基準をテーマにした記念日イベントなどをオンラインで運営しました。例えば記念日イベントの一つ「アウトプット→思考」の日には、半日くらいの時間をとって、「いま頭にあることをアウトプットしてみる」みたいなことをみんなで実施し、いろいろな面白いことが形になりました。 (個人的に人事労務freeeの給与明細がここでのアイデアで楽しくなったのが好き)

New社式のライブ中継のスクリーンショット。司会2人に加えて佐々木がリモート出演していて、コメントが集まっている。
リモートで行ったNew社式。社員のガヤコメントを交えながら盛り上がった
【 New社式 】オンラインで新卒27名の入社式を開催しました! | freee 株式会社

給与明細が発行されたことを伝えるメール。freeeのロゴのつばめがお金を咥えて飛んでいる。
「アウトプット→思考」で生まれた”楽しい給与明細発行通知”
リモート中に新イベント!?『アウトプット→思考デー』開催 | freee 株式会社
給料日にアソビゴコロを!freee、「楽しい給与明細」を提供開始 季節に合わせたデザインの給与明細発行通知メールが届く | プレスリリース | corp.freee.co.jp

こういったことを繰り返しながら、意外とオンラインでもできることがあるなと感じられるようになりました。次に紹介する「フリスピ」が、ある種カルチャーづくりということでは集大成になったと思っています。

カルチャーづくりという点では、オンラインでも一定の成果も出せたし、一方でやはり考えていかなくてはいけないことも出てきているのが現状です。現時点でfreeeは、10月以降は出社したい人は出社してもよいというかたちでの運用となっていて、状況をみながら来年4月以降は出社日などを設けていきたいと考えてます。

フリスピ

freeeでは、毎年7月に1日がかりの全社オフサイトミーティング(フリスピと呼んでます。freee spiritの略)を実施しています。年間の戦略や組織のあり方について議論したり、チームビルディングすることを主眼においた重要なイベントとして位置づけています。

フリスピはもともとは泊まりがけで実施していた合宿型のイベントした。最近は宿泊が難しい事情があるなど従業員の多様性も考慮して、大きな会場を借りて終日開催しています。もちろん今年の7月実施用に場所も確保してありました。

しかし、さすがに今年の企画は緊急事態宣言中に進んだこともあり、オンラインで実施する方向に舵を切ることにしました。ただし、オンラインといっても妥協することなく、オンラインのイベントと同等以上にカルチャーを体感できるような企画をがんばってつくって実行しようというコンセプトで実施しました。

note.com

Remoを使うことで、インタラクティブ性も高く、かつ細かいブレイクアウトセッションや少人数での議論タイムを多く設けて、むしろ議論としてはやりやすい環境をつくることもできたし、僕は自宅をスタジオ化して画面合成で出演したり、司会などのコアなメンバーはオフィスをスタジオとして登場しました。

グリーンバックで撮影されている様子] 合成され、司会とキャラクター「わカルさん」と並んでいる姿

フリスピでは自宅からリモートで登壇し、配信映像に合成した

企画としても、フリスピBOXなる箱が全freeersのもとに前日に届き、その中には時間帯指定で開けてもらうものが揃っているなど、オンラインの限界を超える体験に挑戦しました。フリスピBOXの中には議論で使う素材や、ちょっとした息抜き用にみんなで挑戦した利き茶セット、グループに分かれて挑戦したリモート謎解きで重要なヒントとなるお菓子、そして、最後に乾杯できるビールなどがはいっていて、離れていても体験共有することの重要さを改めて感じました。

フリスピBOXの中身の画像。社内報・スケッチブック・freeeロゴ入りマスク・マスキングテープなど
フリスピBOXの中身

そしてフリスピBOXの秘密兵器として、最後に登場したのは、スマホにつけるVRゴーグルでした。事前にfreeeの歴代オフィスを3Dカメラで撮影し、オフィスのうつりかわりと会社の歴史を重ねてVRで体感できるというもの。これまでの歴史を体感しつつも、まだ「世の中を変えるという旅においてはほんのちょっとの成果しかだせていないよね」ということを再認識し、さらに大きなビジョンに向けて頑張っていこうと確認しあってお開きとなり、その後有志でRemo飲み会などをしました。

この企画を通して、オンラインでもできることが多いとあらためて実感しました。

freeeのロゴが入ったオリジナルVRゴーグル。スマートフォンを入れて使用する。
VRゴーグル。これもフリスピBOXに入っていた

株主総会

社内の行事や日々の営業・マーケティング活動はオンライン化が進みましたが、それだけでなくIR活動なども徹底的にオンラインとなりました。四半期ごとの決算発表のみならず、上場後初めての株主総会もオンラインでの実施となりました。

実は株主総会の具体的な運営準備を開始するまで僕自身も十分理解していなかったのですが、現在の法律では、株主総会自体はリアルで実施したうえでオンラインでの参加機会も提供するというハイブリッド形式しか許容されておらず、株主総会の全てををオンラインのみで実施することができません。また、必ず紙で株主の方々に郵送しなければならない書面も多いことが分かりました。このあたりも今後デジタル化が進んでいくことの重要性をあらためて認識しました。

ちなみに、株主総会の完全オンライン化を可能とすることも議論されているようです

オンラインをメインで実施する以上、社内 (asobibaと呼んでいるfreee社内の多目的スペース) から開催しようということになり、通常の株主総会に関わる管理部署だけでなく、フリスピ等社内イベントのオンライン実行メンバーなども巻き込み、完全にお手製のハイブリッド型バーチャル株主総会を実施しました。このようなお手製の株主総会を社内の幅広いメンバーで作り上げるのはよい経験にもなりました。

株主総会の配信画面のスクリーンショット。佐々木が演台に立ち、スライドが合成されている。
株主総会の配信画面

昨年Zoomが上場した際のロードショー(投資家へのプレゼンテーション)を、通常のフィジカルな面談ではなくZoomで行ったということが話題になりましたが、コロナ禍でむしろそれが当たり前へと一変しました。最近ではIR関連のチームが最もオンラインミーティングやイベント主催慣れしたチームにもなりつつあり、急速な変化が起こった領域なのではないかと思います。

DSなう

ひとつ習慣的に実施していて、かつ、こういうことを継続するのは意味があるとリモートワークのおかげ再認識していることとして、「DSなう」という社内のWorkplaceのグループに #DSWeeklyReport (よくハッシュタグを付け忘れるw) という投稿を毎週してます。

書く内容としては非常にシンプルで、「今週のハイライト」、「今週の感謝」、「今週のプライベート」について、簡単に書くというものです。これは、Facebook社でHTPと呼ばれて、定期的にいろんな人ががやっているそうなのです。freeeの「あえて、共有する」というカルチャーと相性がよいと思い、とりあえず乗っかってみようということで、 Workplaceを導入して以来、継続的に投稿しています。

Workplaceの投稿のスクリーンショット。ヨットクラブの話をしていて、ヨットの写真が添えられている
「DSなう」への投稿

ハイライトは、会社として重要だと思う動きやアナウンスについての解説であったり、全社で共有すべき大きな成果や、みんなで知るべきノウハウを書いたりします。

感謝の部分は、純粋にこれありがとうと言えるようなこと。会社の成果につながるようなこともあれば、個人的な感謝でもよいので、freeersに感謝する内容をここに書きます。

プライベートの部分は趣味のこととか、家族のこととか、週末こんなことしたとか、こんなの買っちゃったとか、そういう話を書きます。

リモートワーク状態だと、社内で情報が「噂」的に広まっていくことが一切ありません。会社のOOさんが、最近こういうことにハマっているらしい、とかは噂で絶対に広まらないので、むしろ積極的に発信していくこともなんとなくつながりを確認する手段として重要です。結構ミーティングでも冒頭で近況共有の時間つくったり工夫している人も社内に多いですが、書いておくとさらにスケーラブルだと思います。

そして最近

こんなかたちで、カルチャーづくりやいろんなことをオンラインで実施するという探求を頑張ってきた1年でありました。頑張って来たがゆえに、ある種の限界もあるなということも感じています。

フリスピのようにガッツリと企画すれば、オンラインでも非常に結束を強めるイベントはできますが、カジュアルに実現するのはなかなか難しいです。しっかり議論を尽くすべきテーマで「オンラインだと長いミーティングはちょっとな」と思ってしまったとすると、やはりオンラインでは生産性が下がってしまうということになってしまいます。

今年得たいろんな経験を踏まえて、今後のあり方も考えていきたいと思っています。