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UXデザイナーが集うイベントのUXデザイン

UX MILK Workstyle 09 feat. freeeで登壇する伊原力也の写真

こんにちは、magi1125こと伊原です。2017年10月に情報設計およびUXデザイン担当としてfreeeに入社しました。よろしくお願いします。

さて、このたび10月11日に開催されたイベント「UX MILK Workstyle 09 feat. freee」で企画に顔を出したり、登壇したり、ペルソナを作ったりという機会に巡り合いました。入社7営業日にして登壇というなかなかスリリングな展開となりましたが、おかげさまで大盛況となり、会場のカウンターにおいてはハイボールを片手に語り合う方々が引きも切らない状態でした。ご参加いただいた皆様には厚く御礼申し上げます。

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イベントの詳しいレポートについては上記「【UX MILK主催】freeeに集う“UXデザイナー” 3つのバックグラウンド徹底解剖」をご覧いただきつつ、こちらではその裏舞台を少しご紹介いたします。

企画フェーズ

HCDサイクルの図。0.人間中心プロセスの計画→1.利用状況の把握と明示→2.ユーザー要求事項の明確化→3.ユーザー要求事項を満足させる設計による解決策の作成→4.要求事項に対する設計の評価→適切な段階へ反復、または要求事項へ適合している(生産へ)

Hints of HCD_vol 1」より引用

UX MILK主催のイベントは、これまで「座ってセッションを聞く」というよりは、「参加者同士が交流する」という点に重きを置いたイベントとしてこれまで開催されてきました。

このイベントの特性を活かしつつ、今回のテーマである「組織の中でどうUXデザイナーが輝いていくか」を参加者同士で考える会にするにはどうしたらいいか。そこでfreeeのUXチームが考えたのは、このイベント自体を「メタ・UXデザイン」にしてみようというものでした。

上記はISO規格としても定義されている、いわゆるUXデザインを行うプロセスを図示したものです。

私たちUXデザイナーは、普段からユーザーの理解のために調査分析やモデル化を行っています。であれば、今回、来場者であるUXデザイナーを対象に調査分析してモデル化を行ってみれば、どんな思いでUXデザインに取り組んでいるか、潜在ニーズはなにか、いま抱えている課題はどんなものか……そういったことが明らかにできるのでは?と考えたわけです。

実施フェーズ

UX MILKのイベントで登壇したUXデザイナーである伊原、黒田、神戸の写真

これを約3時間のイベントで収まるようにするため、以下のような検討を行い、実施しました。

まず、探索型ではなく検証型として計画しました。テーマが「『もっと』UXデザイナーが輝ける」だったので、仮説ベースで「現状理解」と「この先の発展」につなげるかたちが合理的と考えたためです。短い時間で納得感を出せるのもポイントです。

UX MILKのこれまでのイベントレポートや参加者層からユーザーモデルのアタリをつけ、かなり大まかに「ディレクター型」「デザイナー型」「フロントエンドエンジニア型」と観点の整理を行う。そして、それに沿ってUXデザイナーのタイプを短めのセッションで先に仮説を共有、そこに参加者が洞察を追加していく、という流れにしました。スコープを広げつつ、ツッコミを入れやすくするためです。

そして、調査データはワークショップで取得することに。酒の力と場の力(笑)によって暗黙の認知や無意識のふるまいなどが顕在化するという方向を期待し、ビールを飲んでいてもこなせるレベルの、簡易的な連想法を用いたワークショップによって思考の抽出を行うことにしました。

具体的には、ディレクター、デザイナー、フロントエンドエンジニア、その他のうち、自身が分類されると思われるタイプ別にチームを振り分け。そして、そのタイプの特徴を語尾が「◯◯がち」で終わるように付箋に書き留め、ホワイトボードに貼るというスタイルです。

上記をまとめた結果、以下のような流れで実施する運びとなりました。加えて、下記の合間に15分ずつドリンクタイムを設け、酒の力をより強めていく構成としました。写真を見直すとけっこう自分も飲んで赤くなっていましたね……。

  1. 観点の整理:UXデザイナーの3分類
  2. 仮説の共有:10分間の「あるある」セッションを3つ(ディレクターあがり/デザイナーあがり/フロントエンドエンジニアあがりのUXデザイナー)
  3. 思考の抽出:「◯◯がち」を貼っていくワークショップ
  4. ラップアップ:パネルディスカッション
  5. 交流会

分析フェーズ

ワークショップで集められた付箋を分析している写真

このワークの付箋は会話の呼び水として功を奏し、「確かに!」「あるある」「えーこんなところにこだわるの」などなど、大いに盛り上がりました。写真を撮って帰る人も多数。いいネタが集まったと思います。

しかし、やはり調査しっぱなしでなんとなく「あるよねー」で終わってしまってはUXデザイン的ではありません。自分が気になった意見だけが目に入ってしまいますし、上がってきた観点同士の関係性もあいまいなままです。やはりきちんと分析を行い、声の裏側にある思考や潜在ニーズを導出してこそ、次へのインプットとして有意なものになります。

ということでこの付箋を使って、いわゆる上位下位関係分析(ラダリング)をやりました。ちなみに、その場で分析できたりしたら盛り上がりそうだなとも思っていましたが、登壇者自ら酒を飲むスタイルなのでちゃんとした分析はできないことに気づきました!というわけで、醒めたアタマであとで対応することに。

語尾を「◯◯がち」に統一したことで特徴的な「行動」が抽出でき、それに対して「それはなぜ?→こうしたいからでは?」というのを繰り返していき、本質的なニーズに迫っていくという形をとりました。元ネタがだいぶラフなので背景情報が足りず、そこまで上位には登れませんでしたが、ある程度まとまりました。

付箋に対して上位下位分析を行った結果のホワイトボードの写真。ディレクター、デザイナー、フロントエンジニアでそれぞれ分かれている。

また、まとめていく中で、ディレクター・デザイナー・フロントエンドエンジニアそれぞれで「1. そのロールの特徴」「2. ゆえにやってしまうこと」「3. コミュニケーション上のニーズ(解決したい課題)」「4. UXデザイン上のニーズ(解決したい課題)」という形に内容を分類できることに気づきました。

前2つ(「そのロールの特徴」「ゆえにやってしまうこと」)については先のセッションで糸口を作ったので、その話が出てくるのは自然な流れです。それをもとに、後ろ2つ(「コミュニケーション上の課題」「UXデザイン上の悩み」)が出てきたことに、このイベントの価値があったのでは?と感じています。

モデル化

そしてこれを、いわゆるペルソナの形にしていきます。上記の定性的なデータだけだとインプットが弱いので、今回のイベントに申し込んだ方の属性情報(デモグラフィックデータ)から、性別、年齢、経験年数、業務上の役割などを導出し、骨組みとしました。

そこに、その年齢と業種で絞り込んだストックフォトをはめ込み、その年代に多そうな名前を年別ランキングなどを見ながら設定。そして、分析結果を先の4分類にあてはめ、3タイプのペルソナシートのできあがり。

最後に「整理が大好き」「中間成果物のデザインにもこだわる」とされた(笑)ビジュアルデザイナーあがりのUXデザイナーである96さんに資料を整えてもらい、完成です。

ディレクターあがりのUXデザイナーのペルソナ

デザイナーあがりのUXデザイナーのペルソナ

フロントエンドエンジニアあがりのUXデザイナーのペルソナ

※下記Googleスライドで詳しくご覧いただけます。

docs.google.com

この資料は社内外問わず好評であり、特にUXデザインに対する現状として、UXがUIと思われている問題、手を動かす/動かさない問題、クリティカルなものとみなされにくい問題などなど、コミュニケーションやUXデザインそのものの立ち位置における課題をよく表したものになっていると感じます。

組織とUXデザイン

UXデザイナーが集うイベントのUXデザイン、いかがでしたでしょうか。イベントの立て付けとしてはなかなか面白いものになったと思います。また、「組織の中でどうUXデザイナーが輝いていくか」については、解決していくべき課題の一部を明らかにすることができました。そこをどうデザインで解決していくかを示せれば、その組織は一歩一歩、先に進んでいける、ということになるでしょう。

ちなみに、私が入社して1ヶ月経って思うのは、freeeはこういった課題がかなり少ない環境であるということです。

これは、そもそも会社の価値基準に「本質的(マジ)で価値ある――ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをする。」であったり、「理想ドリブン――理想から考える。現在のリソースやスキルにとらわれず挑戦しつづける。」といった定義があるからなのでしょう。

freeeの価値基準のダイアグラム。『本質的(マジ)で価値ある』、『理想ドリブン』、『アウトプット→思考』、『Hack Everything』、『あえて、共有する』

jobs.freee.co.jp

UXを基礎とすること、またUXにおける理想を追い続けることを、会社が価値基準として定義している。これはUXデザインに関わるものとしてはかなり心強いことです。実際、プロダクトのデザインに関わっていても、エンジニアやプロダクトマネジャーのほうから「工数は気にせず、まずは理想的なフローを定義してほしい」という話が上がってくることがしょっちゅうあります(むしろ遠慮していることを見抜かれているとも言えます)。これは面白いところに来たぞ……という気持ちです。

というわけで、今後もUXデザインにまつわるイベントなどを通じていろいろ活動していこうと思います。どうぞよろしくお願いします。

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