こんにちは、freeeの長内(ニック)と申します。この記事は、freee Developers アドベントカレンダー 2021、そして、Qiitaアドベントカレンダー「IT資格取得をテーマに学びをシェアしよう!」の12日目の記事です。
2021年10月に、AWS認定ソリューションアーキテクト(SAA)の資格を更新しました。更新の際に、いろいろ考えることがあり、アドベントカレンダーに書いていきます。
資格勉強のメリット
資格を取得する理由はさまざまですが、自分は以下の2つが大きいと考えています。
- 自分が知らないベストプラクティスの把握
- 技術習得に対するモチベーションの維持
自分が知らないベストプラクティスの把握
最初に「自分が知らないベストプラクティスの把握」について記述します。
業務で技術系の作業をしていると、ハマりがちなのが「自分の知識・経験の範囲内で問題解決を考える」ことです。資格試験の勉強は、自分の知識を広げ、未知のベストプラクティスを見つけることに役立ちます。
分かりづらいので、一つ例をあげます。
AWSにはEC2という仮想サーバーとS3というストレージサービスがあります。前職の業務でよくあった要望が「EC2の仮想ストレージとして、S3を利用したい」というものでした。
この問題に対する解決方法はいろいろ考えられます。
8−9年ぐらい前、技術系ブログ記事でよく見かけたのが「EC2からS3をマウントして、仮想ドライブとして扱う」という方法でした。s3fsなどのライブラリを利用して、EC2の /mnt 配下にS3を接続してしまう、という方法です。この方法は一時期あちこちで見かけました。
一方でこの方法は、突然マウントが外れることがあるなど、やや安定性に欠ける側面があります。AWSも、公式に「EC2→S3のマウントは非推奨です」とアナウンスしています。つまりこれは、アンチパターンの一つといえるでしょう。
しかし、公式アナウンスに気がつかず、EC2→S3をマウントすることで問題解決しているパターンは多く見受けられます。現在でも「EC2 S3 マウント」で検索すると、さまざまな記事が見つかります。アンチパターンは、問題が発生しない限り、なかなか見つけづらいものです。
このようなアンチパターンを避け、ベストプラクティスを見つける上で、資格試験の勉強は大いに役立ちます。AWSソリューションアーキテクトの資格試験では、EC2とS3の接続について出題されることがあります。自分は勉強を通じて、「IAMロールをEC2に割り当て、S3と接続する」「公式のSDKを利用する」「用途によってはEFSを検討する」など、さまざまな方法に気づくことができました。
自分が気づいていないベストプラクティスを見つける上で、資格試験の勉強は、役立つ手段の一つということができるでしょう。
技術習得に対するモチベーションの維持
次に、モチベーションの維持について。
ここでは調査データを引用します。
資格試験で著名なピアソンは、29000人の資格試験受講者に対して実施したアンケート調査「2021 Value of IT Certification Report」を頒布しています。この中に、IT資格試験を受講したきっかけについての調査結果が共有されています。
(表はピアソン「2021 Value of IT Certification Report」より引用 https://home.pearsonvue.com/voc)
アンケート調査によると、資格受講者の70%強は「スキルや知識、能力の習得のため」に資格受講をしています。日本は「スキル習得のため」の受験が、世界平均よりも僅かに上回り、逆に「昇進のため」「転職のため」などの項目が世界平均より下回っています。
日本人は「仕事のため」以上に、「自己研鑽・モチベーション維持」のために、資格を利用していることがうかがえるデータとなっています。
自分もそうで、資格試験をモチベーション維持に利用しました。
freeeに入社する前は、プリセールス・セールスエンジニアとして、AWSとCMSを組み合わせた構成の提案・相談を受けたり、AWSを利用したハンズオンの講師などを担当していました。このため、AWSに触れる機会が多くありました。
資格を持つことで、クライアントからの信用を高めたい、と思ったのが、資格を取得したきっかけです。
freeeに入ってからの2年間は、マーケティング的な業務が多く、AWSに触れる機会はほとんどありませんでした。とはいえ、せっかく身に付けた知識を捨てるのももったいない…と思い、資格の更新を行うことにしました。
資格を利用して、AWSの勉強と忘れかけている知識の再確認に利用したのです。
受験費用・勉強コストはかかりますが、資格試験をうまく利用すれば、技術習得へのモチベーション維持に役立てると言えるでしょう。もちろん、習得した知識の証明などにプラスなのは言うまでもありません。
資格で得た知識と、実務に必要な知識の違いは大きい
資格をうまく使うと自身の勉強、そしてモチベーションアップにプラスとなります。 一方で、資格と実務は明らかに異なります。
資格で得られる情報・知識は、目の前の問題を解決するのにすぐに役立つものではありません。現実に発生している問題は、現場でしか解決できないことが多いものです。
資格を取得したからと言って、即座に現場の仕事ができるものではありません。鉄火場のような「現場」の仕事、問題は、やはり最前線で仕事をしていないと解決できません。いつの時代、どこの世界でも同じですが、事件は現場で起きるものです。
実務経験がない、資格しか持たない担当者が現場の問題を解決しようとしても、一朝一夕にはいかないことでしょう。現場の問題・事件を解決できるのは、「現場力」に長けたエンジニアであることは間違いありません。
そんなわけで、これからも資格とうまく付き合っていきたいな、と感じました。
明日のアドベントカレンダーは、名古屋で活躍中の moai さんです。お楽しみに!