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Regional Scrum Gathering Tokyo 2024に参加しました

こんにちは、freeeの mattsun, micci, hmaruya, ひろみつ, barus です。 先日、国内最大級のアジャイル・スクラム関連のイベント「Regional Scrum Gathering Tokyo 2024(RSGT2024)」 が開催されました。freeeからもメンバーが参加したので、本記事はその参加レポートです。

目次

良いチームってなんだろう、の考えが深まった

freeeカードでエンジニアリングマネージャー・スクラムマスターをしているmattsunです。RSGTへの参加は今回が初めて!ドキドキしながらオフラインチケット購入に挑み、なんとか獲得しました。オフラインチケット購入は、発売から30分以内(体感)に完売するほどの激戦ぶりで、チケット購入時からワクワクしていました。

と、話がそれましたが、RSGTでの一番の学びを一言でいうと「良いチーム構成やチームの検査」の理解が深まったことです。freeeカードはリリースから2年経ちグロースフェーズなプロダクトで、チームメンバーも徐々にふえているという状況があります。そんな中、あるチームの人数が多い(PdM,Eng,QAで合計10名)ことが課題ではと感じていました。

RSGTでは初日のHeidiさんのkeynoteからとても刺さりました。僕は「タックマンの法則」に基づくと、チームを変更するということはチームの成長を妨げることだと思い「できるだけ変更しない」のが正しいと盲信していました。が、このkeynoteではそんな考えを変えてくれる学びが多かったです。

学び

  • そうは言っても現実にはチームが変更はしうる。それに、時間や環境の変化によっても影響をうける。
  • チームの成長のためにもreteamingすることは大切な場合がある。
    • 具体的には、チームの進化・時間の経化を表す「エコサイクル」における「成長不良(failure to thrive)」「硬直の罠(rigidity trap)」など。*1
  • reteamingには5つのパターンがある。それぞれのパターンにおいて、どんなことが起きうるのか、なにを大事にすればよいか

加えて、「チームの検査」についての学びです。

価値提供のリードタイムを短くするための戦術としてのチーム替え「流動チーム体制」に取り組んでいたら実はLeSSでのモブだったお話 / Our way of Dynamic Reteaming was just a "mob" of LeSS - Speaker Deck

LINEヤフー株式会社のnakoさん、nittaさんの発表で、もともとLeSSで開発していたチームが、なんと毎週チームメンバーを入れ替えるという戦略をとった話でした。かなり攻めた戦略だと感じたのですが、次の学びがありました。

  • チームからボトムアップに「流動チーム体制」やってみようって声が上がるくらい、主体性がありよいチームだという前提があった
  • 退路として、「xヶ月後に振り返りをして、だめそうだったらやめよう」という合意があったのがよい

A Theory of Scrum Team Effectiveness 〜『ゾンビスクラムサバイバルガイド』の裏側にある科学〜 - Speaker Deck

ぼのたけさんの「スクラムに関する研究」の話です。 この columinity はそのままチームの検査に使ってみたいと思いました。

後日談

これらの学びを活かし、課題に感じていた人数が10名と多いチームの分割(DynamicReteamingでいう Split Team)を提案し実際にチーム分割しました。この過程では次のことを大事にしました。

  • 透明性:「なぜ分割したほうが良いと思うか」「xxまでに方針を決めて、yyころに分割するという方針」などを書いて共有した。積極的に意見を表明してほしいことも伝えた。
  • 考えうる懸念点や、対応方針を事前に列挙した。
  • メンバーとの1on1でも個別に「どう思うか」「懸念に思うこと、分からないことはあるか」を手厚く会話した。
  • チームのLearningSessionで、「チーム分割」に対する期待や懸念点を表明してもらう場を設けた。これをもとに1ヶ月後に合同レトロスペクティブを実施することにした。

これらの結果が見えてくるのはまだまだこれから。これからの両チームの成長が楽しみです。

海外コーチと1on1!

freeeサインでスクラムマスターをしているmicciです。RSGTへの参加は2年連続2回目です。昨年初めて参加した際はセッションを聞いて学びを得ることにフォーカスしていましたが、今年はより色んな人と交流をすることにフォーカスしました。色んな人とお互いの現場について話したり、聞いたセッションについて学んだことを共有し合うことで、その場でしか得られないような生の発見をして、それを持ち帰ることが出来ました。

そんなRSGTのコンテンツで特にオススメしたいのは、Coaches Clinicです。Coaches Clinicとはアジャイルコーチの方と1枠25分で会話出来るコンテンツで、現場の悩みを直接聞いてもらいコーチングをしてもらうことができます。今年はThe Great ScrumMaster(邦題:SCRUMMASTER THE BOOK)の著者であるZuziさんが現地でスピーカーとして参加しており、Coaches Clinicも開いていただけるということで参加してきました。コーチングの中では、まず自分の悩みについて聞いていただいた後にいくつか質問をされながら話していきましたが、その質問一つ一つが自分の悩みについて自分に無かった視点から投げかけられるので、強烈に自分の視野が広げられるような感覚になりました。 今回のRSGTでは海外から来ているスピーカーも多かったためか会場内に通訳を行っていただける方が何人かいました。ZuziさんとのCoaches Clinicも通訳していただきながら話すことができたので、英語には不安があったもののスムーズにコミュニケーションを取ることが出来ました。

普段話そうと思っても直接話すことが難しいような海外の方とも話せてしまうのがRSGTの魅力の1つだな、と強く感じました!英語に自信がない中でCoaches Clinicに申し込むのは「うっ」と思いましたが、得られるものはとても大きかったので、同じように感じる方がもしいたら是非参加してみてください!

チームの改善を考える視点をこれ以上ないほどに学んだ3日間

freee会計でエンジニア・EMをしているhmaruyaです。RSGTに初めて参加しました。 初めは同僚にRSGTの楽しみ方を聞きつつ、徐々に廊下での会話に参加してRSGTの雰囲気がわかるようになっていきました。初対面同士でも臆せずオープンにスクラムのことやチームの取り組みについて話し、意見を交換している、そんなことが当たり前の場を見て驚いた3日間でした。

私は今回のRSGTを通じて、チームに起こっていることを観察・理解する引き出しと、チームから生み出される価値をより大きくするために何ができるかを学ぶことができました。Coaches Clinicでチームの自律性に着目するきっかけを与えてもらい、ぼのたけさんのセッションでその背景にある研究について聞き、また別の観点としてJhonnyさんのセッションでシステムコーチングの見方を学びました。チームの反応性だけを見ていたところから、その前段の要因にチームの自律性や継続的改善があり、実際にチームに何が起きているのかをシステムコーチングの考えを持ってもう一度捉え直すところまで視野が広がりました。さらに3日目にメタスキルのワークショップに参加し、ここで得た知見・アイディアをもとにどうやってチームにもたらして変化を起こしていくのか、についてメタスキルの効果を体感しながら考えることに繋がりました。

他にも多くのセッションをみて、まだまだ学びながらチームでの実践に落とし込んでいる最中ですが、これだけ短期間に対話を通じて学ぶことができる場は初めてでした。 次回はここで学んだことを実践した経験をもって、より積極的に話しにいきたいと思います。

同じチームのメンバーと場を共有できた

プロダクトデザイナーのひろみつです。hmaruyaさんと同じスクラムチームで、freee会計の会計事務所向けの開発をしています。RSGTには何年か参加していますが、今年はじめて同じスクラムチームのメンバー2名と一緒にオフライン参加することができました!オンラインの配信も、参加者がいれば一緒に見ることはできますが、セッション内容だけではなくRSGTのリアルの熱気を共有できたのはとても大きかったです。アジャイルコミュニティの知り合いと、会社のメンバーというそれぞれ別文脈で知り合った人たちが繋がって、共有できる文脈ができるというのはとても不思議な気分でした。カンファレンス終了後、他のチームメンバーと録画の視聴会をして「来年はRSGTに行ってみたい」という声が上がったり、公開された資料をきっかけにプロダクトマネージャー達とベロシティについて議論する場が生まれたりと、こうやってムーブメントが起こっていくんだなと感慨深かったです。

初日のキーノートでは、「DynamicReteaming」という考え方を初めて知りました。これまでは、チームメンバーを保つことが理想、1人でもメンバーが変わると再度チームがリズムを取り戻すまで最低3ヶ月はかかる…といった考えを持っていたのですが、理想だけではなく現実に向き合い最善になるよう適応していけばいいのだと心が軽くなりました。わたしたちは組織というシステムのなかにいて、そのライフサイクルがあるということを考えさせられました。自分がいるプロダクトチームも例外ではなく、メンバーが何度か入れ替わったりしているため、一緒に参加したエンジニアと感想戦がはずみました。

全体を通して、今年のセッションは「価値」「アウトカム」の話が増えたような印象でした。OSTで「アジャイルとデザイン」関係のテーマがいくつか出ていたのも特徴的でしたし、クロージングキーノートは狩野モデルで有名な狩野先生。「できるだけ大きなアウトカムが得られるように、シフトレフトとシフトライトの両面から製品開発に取り組んだお話」では、プロダクトの使われ方を観察する「現場リサーチ」が紹介されており、自分たちのチームでやっていることに自身が持てたりもしました。ここ数年、個人的に「デザイン」と呼ばれている領域と、アジャイルがどのように接続されるか興味を持っているため、今後の流れがかなり気になっています。セッションを聞いて考えた内容を、3月に開催されるスクラムフェス福岡のプロポーザルに応募し、ありがたいことに採択いただきました。スクラムフェス福岡に参加されるかたは、福岡でお会いしましょう!

オンラインでも得られる栄養素がある

freee決済プロダクトでQA兼スクラムマスターをしているbarusです。 私もRSGTに初めて参加しましたが、繁忙タイミングと被った関係で他の方々とは異なり、オンラインかつ作業しながら余力のあるタイミングで拝聴していました。
私個人として推したいセッションは漆原さんの「エンジニア組織の経営論 〜エモい開発と売上数字は両立するか〜」です。 昨今のXをはじめとしたSNSで定期的に話題になる「エンジニアはビジネスサイドを知るべき」「経営にもエンジニアの世界を知ってもらうべき」論に対してのなぜ?について触れる良いセッションだと思います。
QAの世界においても、ビックバンテストによる品質低下を防いで前工程から品質を埋め込むためのシフトレフトや、より各ロールの専門知識を活かして品質に組み込むというトピックにおいての、越境や機能横断性を高めるという文脈で親和性を感じました。まだ見ていない方はぜひ。

さて、オンライン参加としてこのブログに参戦しているのは自分だけなので、オンライン参加でのRSGTの魅力についても触れておこうと思います。
RSGTのDiscordサーバーには各セッションのチャンネルや各社アジャイルコーチ陣による相談室のほかに「廊下」なるチャンネルがあります。
実際にセッションを視聴しながらわいがやしたり、セッションとは別の話題でギャザリングし放題のスペースです。セッション時間中だけでなく、RSGT0~2日目の夜、さらにはRSGT終了後もたまにギャザっている様子を見ることができます。
もし少しでもお時間がある方は、顔を出すだけでもギャザリングできて幸せになれるのではないでしょうか。

...と、ここまでオンラインでもギャザれる「廊下」の紹介をしたのですが、実は自分は廊下に行く暇すら取れなかった人でした。
では、オフラインに行けなかった、オンラインでもギャザれなかった、なんならそのうちyoutubeに公開されるし、わざわざ高いお金を払ってまでオンラインチケットを買って得られるものがあるの??? と思う人がいるかもしれません。

あります!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

それは、オンライン越しでも伝わる「熱量」です。
セッションを通した中継の一幕やDiscordのチャンネルでされているわいがやを見ると、スクラムを導入する・上手く回すべく奔走する方々同士が、互いのスクラムをより良いものにするために議論やアドバイスをしている姿を多く見ることができます。(廊下で講演者同士の中継が始まってたりもしていた)
そんな姿を見ていると「羨ましい...」という気持ちにさせてくれます。
ここで熱量が伝染して、自分もギャザりたい...と思った方に朗報です。 RSGTのセッションはYoutubeに公開されるまではURLを共有しないことを条件に、録画の同時視聴が認められています!つまり、社内やグループ等で録画視聴会を開催して、そこでギャザることができるわけです。
RSGTを気になってはいたけど手を出せなかった人、参加したかったけど都合が合わなかった方、オフライン参加だったけど参加したセッションと同時刻でやっていた他のものを見たいetc...というニーズを満たすことができます。
ということで、社内で参加できなかった人を交えて、録画視聴会を企画してみました。(月1でやっていくことになりました)

RSGTの録画を見ながら酒を呑む会 第一回、ケンタッキーと上善如水を囲みながら「エンジニア組織の経営論 〜エモい開発と売上数字は両立するか〜」を視聴している様子
RSGTの録画を見ながら酒を呑む会 第一回、「エンジニア組織の経営論〜エモい開発と売上数字は両立するか〜」を視聴している様子

社内にギャザってくれる人がいない(泣)という方でも、compassなどでRSGT視聴会が開かれていたりするようなので、そちらに参加してみることから始めてみても良いのではないでしょうか。

このようにオンライン越しであっての熱量は伝染します。
「熱いうちに鉄を打つ」モチベーションに繋げやすくする「熱量」こそ、オンライン参加で得られる栄養素だと思います!
※もちろんオフラインでも得られると思います。
(本音:来年こそはオフライン参加したい。。。)
皆さんも良いスクラムライフを〜〜〜

*1:詳しくは、Heidiさんのブログ The Dynamic Reteaming Ecocycle も見てみてください!