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古事記輪読会をやってみた

こんにちは、livaです。普段はPSIRTでセキュリティエンジニアをやっています。アドベントカレンダーでは毎年記事を書いているので私が日頃何してるかはそちらを読んでいただければと思います。

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さて、今回は輪読会の話です。現在毎週金曜日夜に古事記輪読会を主催しています。「古事記?技術書の古典のことかな?」って思った方、不正解。歴史書の古事記です。

ja.wikipedia.org

「技術書でもない本を輪読する?なぜ?」という疑問は当然だと思います。そのあたりは経緯も含めて話していきたいと思います。

なお、今回技術的な話は一切出てきませんのでご了承ください。


目次


なぜ始まったか

普段は技術書の輪読会を主催していますが、どうカジュアルに緩く進めても「仕事っぽくなってしまう」ことを課題に感じていました。そこで「本業からズレたものを社内輪読会のネタにやってみてもいいんじゃないか?」と思いつきました。主催の完全なる趣味に走り、それに興味を持った参加者と一緒にわいわいやることで仕事感はなくなり緩いコミュニケーションも取れるだろうと。昨今チームをまたいだコミュニケーションも減りつつあるのでこれは1つの手段として使えるかもしれないと感じました。

なぜ古事記を選んだか

「みんなで読むと解釈違いが出てきておもしろそう」と感じたことです。古事記は文字だけではなく状況を思い浮かべて読まないとわけがわからない部分も出てくるので個人の想像力によって補完しています。この想像力は個人間で解釈違いが出てくると考えました。

古事記を読む最初のきっかけとなったのは地学でした。私は火山学が好きで普段からも火山に関することを色々と調べています。天文学、気象学と並んでとても魅力的な学問だと思っています。

その火山学をベースに置いた小説「死都日本(石黒耀著)」があるのですが、それを読んでいたとき古事記に関する記載がありました。この本では「天孫降臨での記載は実は火山の噴火による破壊と再生の話なのではないか?」という解釈がとても興味深く、「自分でも読んでみよう」と1人で読み進めていました。その話をSlackにある自分の分報チャンネルに貼ったところ「輪読会やってみたい」との声があったので始めてみました。

「古事記輪読会やりたい」と声が上がった瞬間
「古事記輪読会やりたい」と声が上がった瞬間
ちなみに余談ですが、「死都日本」では天孫降臨以外でもしばしば古事記が言及されています。興味のある方はぜひ読んでみてください。物語としてもシンプルに面白いです。

使用している本

使用している本は竹田恒泰著の「現代語訳古事記」です。

hon.gakken.jp

選んだ理由は「Amazonで眺めていたら読みやすそうだったから」という至極単純な理由です。

非常に読みやすく、適度に解説も入っているので良書だと思います。末尾には付録として神武天皇に至る系図も載っています。

輪読会の進め方

あまり凝り固まったことはしていません。輪読会としての体裁を保つ用にメモを1つ用意しておき、その日の担当者が事前に読んだ内容を書いておきます。書けなかった場合はみんなで読みながら書いていきます。

「事前にここまで読んでおく」といったことはせず、集まったその日の進みによって臨機応変に対応しています。この社内輪読会の特徴的なところは「酒が必須」なところです。参加者は「御神酒」と呼称してます。日本神話を題材にしている本を読むので御神酒、単純ですね。輪読会で進めているうちに酒が進んで頭が回らなくなってくるので「このくらいでいいか」となったところでその日の輪読会は終了します。あとは打ち上げと称して好きなだけ酒を飲みます。宴会ついでに輪読会やってるような感じになってます。

この輪読会はメイン担当以外は参加者を絞らず、meetのURLも分報チャンネルに貼り付けて出入り自由にしています。最近はラジオ代わりに聞いてくれる同僚もちらほらと出てきました。「意外と真面目にやってる」と驚かれたときは笑いました。

読んでみての学び

進捗は上つ巻が終わったところです。日本は「万物のものには神が宿る=八百万の神」と言うことが多いですが、そのことを物語るようにどこにでも神が宿っているという描写がそこかしこに出てきます。

神生みや国生みは日本という土地がどう生まれていったかというのが書かれています。とても興味深いですね。このあたりは火山学大好き人間にとっては「どこが噴火してどういった被害が出たのか」なんてことを考える余地があるので非常に面白いです。

国譲りが終わり天孫降臨が終わった頃、神武天皇の東征が始まる頃になると行く先々の有力者や豪族との争いがぼかしながらも書かれていて、大和王権の成立までの過程がわかります。ここを読み進めていたときの参加者の合言葉は「兄弟が出てきたら兄は死ぬ。兄ちゃんかわいそう。」ということでした。「弟より優れた兄は存在しない」と言わんばかりに兄とされた存在は消えていきます。自分は弟がいて兄にあたるのでこの描写を見ると心が痛いです。

神々の行動の無茶苦茶さも目を引きます。詳しくは書きませんが、これは現代価値観で論じてはいけない部分ですね。「あのときはそうだった」と思うことが必要になります。国によっては即禁書レベルじゃなかろうか。「物語として読み、そこに現代の価値観を持ち込まない」というのが古事記(に限らず歴史書全般)を読む上で必須の事になってくると思います。

参考にしているサイト

本だけでは読み解けない部分は國學院大學古事記学センター を参照しています。國學院大學が本腰を入れてまとめただけあって情報のまとまり度合いが素晴らしく、また原文と現代訳の比較もでき、何かと参考にしています。

実際の雰囲気

メモのスクリーンショットから雰囲気を感じ取ってください。

「ことあまつかみ」と呼ばれる概念上の神が生まれた
すべての始まり

伊邪那岐、伊邪那美による神生みの章を読んだときの様子です。
神生みの章

最後に

「主催の趣味で始めた輪読会が果たして盛り上がるのか?」という疑問はあったのですが、回を重ねるごとに盛り上がってます。担当者は古事記の全体像を全く知らないため、読んで推測し、一般的な解釈を調べ、それを話し合って、結果をメモに残していくため、とても学びの多い時間になっていて、本業以外の勉強をするというのもたまにはいいと感じています。

古事記には関連図書も複数あり、終わった後の続編もすでに計画されています。出雲風土記が今の所の候補です。古事記と同様に最古の歴史書である日本書紀になるかもしれません。

おまけ

開発時のPull Requestレビューのコメントにも古事記に触発された文言が書かれるようになりました。

古事記に触発されたLGTMコメント
古事記に触発されたLGTMコメント

社内Slackには神も登録されています。

タケミカヅチ絵文字
建御雷神